ループ三部作の謎

最終更新日 2月8日


       すでに、このコーナーではおなじみの、当HPの鹿児島特派員(と、勝手に     
     任命してしまいましたが)SYさんから、早速「リング」三部作に関連した鈴
     木光司の新作「バースディ」の報告が送られてきました。

以下は、SYさんのご報告にわたしのコメントを添えたものです。

この新刊は、「リング」「らせん」「ループ」から派生した三つの短編を収 めたものです。

第一話、「空に浮かぶ棺」は高野舞のからだを乗っ取った山村貞子が、この 世に再出現するまでを描いたものだということです。鈴木光司は、この「空に 浮かぶ棺」というイメージが、「らせん」の中でとても気に入っていたので しょうね。だから、この部分だけを取り出して、独立した物語として、もっと 書き込みたかったのではないでしょうか。

第二話、「レモンハート」は、山村貞子の劇団時代の話や、当時の貞子の 恋人、遠山の話など、山村貞子をめぐって展開しているそうです。

第三話の「ハッピー・バースディ」はまさしく、「ループ」の続編にあたる 話。ループ界に高山竜司として送られた、二見馨のその後を描いています。こ れから読む方のためにあらすじには触れません。わたしは、もし鈴木光司が、 「ループ」の続編を作るなら、単行本一冊分くらいの長いものを書くのではな いかと思っていましたが、意外にも短編で済ませてしまいましたね。しかし、 油断はできません。小説「リング」には、TV版、二つの映画、そして放映中 の「リング〜最終章」など、あらすじの違うバージョンがどんどん出ています し、鈴木光司自身、「らせん」に対しての「ループ」のような、同じ物語を違 う角度(次元)から描いた小説を書いています。もしかすると、これが本当の 完結編ではないのかもしれません。

SYさんの感想からすると、わりと軽めの本のようです。

テレビの「リング」も、しっかりあらすじを追っていますよ。小説とは異なっ た結末が用意されていて、結末当てクイズまであるようです。でも、このまま 行くと、ストーリーはなんでもありという感じで、なかなか予想がつきにくい ですね。


(1月11日)

前々回情報を提供して下さった鹿児島県在住のSYさんからまたまた貴重な 情報をいただきました。 なんと「リング〜最終章」の次回のあらすじがインターネットで手に入るの ですね。これを聞いた時、わたしはもう誘惑に勝てず、来週を待たずに早速見 てしまいました。

このトップページの目次の「番組ページ」の「番組ホームページリンク集」 へ行きます。そして番組一覧表から「ドラマ」の中の「リング」を選ぶという わけです。ここには、キャスト情報も載っています。ここに意外な発見 が・・・。なんと山村貞子の母、山村志津子の名前があるんですね。というこ とは山村貞子もストーリーに現れてくるのでしょう。

しかも次回予告から行くと、どうやらこの死を呼ぶテープは山村貞子とまっ たくの無関係ではなさそうです。松崎ナオを除けばほとんど原作と同じのよう です。さて、このテレビ版ではこのテープを原作に忠実に再現するでしょう か?恐いですね。(映画ではこのテープの内容がかなり省略されていて、それ ゆえ、原作の怖さがほとんど損なわれてしまったようですが。)

というわけで、来週まで待てないみなさん、以下がそのフジテレビのURLで す。

http://www.fujitv.co.jp/jp/index.html


(1月8日)

早速、「リング〜最終章〜」第一回目のご報告が山口県在住のTYさんから 入りました。たいへん丁寧にあらすじを解説して下さってありがとうございま す。

わたしはタイトルから勝手に小説「リング」に続くものと思っていましたが、 このテレビ番組は、「リング」とは異なった設定で始まる「リング」のストー リーに平行するドラマなのですね。

心臓麻痺による四人の死を中心にストーリーが展開する点は同じようですが、 人物設定や細かい点は違うようです。その異なる点の中でも山村貞子が登場し ないというのはかなり大きな相違点ではないでしょうか?(それともこれから 登場するのか?でも例の死を呼ぶビデオテープの設定が違っていますが。)松 崎ナオというアイドル歌手が果たして山村貞子に代わる重要人物なのか・・?

それから、細かい点で微妙に原作を踏襲しているのが心にくいですね。たと えば、設定を変えながらも、浅川の息子の名前が陽一(小説では陽子)、医学 的な面で浅川に協力する医大の研究員が宮下(これはたしか「らせん」で登場 する安藤の友人でやっぱり医大の研究員でしたよね。)、それから浅川の資料 集めに協力する新聞社の後輩吉野(これは小説では、男性で先輩だったはず)、 そして宮下の上司の長尾教授(小説「リング」で長尾といえば、あの山村貞子 を強姦して殺した長尾城太郎ですよね。)、という具合に小説と同じ、あるい は類似した名前を利用しています。うーん、なんてあざといと思いつつ、こう やってとうとうと名前を挙げてしまうわたしは、まんまとテレビ局の思うツボ にはまっているのでした。

小説「リング」ファンも楽しめそうな番組ではないですか。(というわたし は実際に番組を見ていないので、ただあらすじから判断するだけですが。)

というわけで、「リング」ファンのみなさま、この欄で熱く語り合いましょ う。(下の欄からのメール送信をお待ちしております。)


(12月29日)

このコーナーも、2ヶ月以上更新しないまま放っておいてしまいました。ご めんなさい。

さて、新年も近づき、「リング」ファンには見逃せないニュースが相次いで 入ってきています。

まず、「リング」の続編にあたる「リング・最終章」が1月からテレビで放 映されるということです。(シリーズもののようです。毎週木曜午後10時放 送とのこと。)浅川と高山が高校の同級生という原作とは異なり、浅川には 30代の柳葉敏郎、高山には23歳の長瀬智也(ドラマでは21歳という設定) という配役が決定しているそうです。(配役にストーリーをあわせたのか?)

さらに、映画「リング2」(って、「らせん」の立場はどうなってしまうわ け?)が1月23日封切られます。こちらでは、高山を映画の前作と同じ真田 広之が演じているようです。が、ストーリーは「らせん」とは異なります。な んと、あの山村貞子は、井戸の中に落とされた後、28〜29年間生きていた のですね。(このへんの説明をぜひ聞きたいものです。)貞子の死体が発見さ れ、死体解剖の結果、つい1〜2年前まで生きていたことが明らかになるのだ そうです。出発点からして、原作とは大きく異なるわけで、この後、どのよう に物語が展開するのか、興味深いものです。

それにしても、「リング」から「らせん」「ループ」を無視して、いろいろ な仮定から続編を作ってしまうというのは・・・、「リング」ファンとしては 複雑な気分です。

さらに、1月下旬に「バースデー」というリング外伝的な小説を鈴木光司が 出版するということです。内容は、山村貞子の若かりし頃の話とか。

わたしは、映画の「リング」「らせん」は見ていません。(今度、友人がビ デオを貸してくれるということなので、楽しみにしていますが、わが家のビデ オは日本のビデオと互換性のあるマルチ方式ではないので、見られるかどうか 心配。)また、テレビの「リング・最終章」も見る機会はないと思いますので、 ご覧になった方、感想をお寄せ下さい。(この欄の情報は、鹿児島県在住の SYさんから提供していただきました。)

       「ループ」三部作をお読みになりましたか?あの鈴木光司作の「リング」
     「らせん」と続き、「ループ」で完結する(のか?)三部作です。もしまだ
     だったら、読んでから、このコーナーをお読み下さい。他の人の楽しみを台無     
     しにしたくないですから。

さて、では、読んだ方、この三部作の完結のしかたに納得ができましたか?

わたしはできません。わたしの友人もできませんでした。

作者によると、「リング」「らせん」を書いている時には、それぞれ、「ら せん」、「ループ」のことは頭になかったということですが、それがこの納得 のいかない結末になっているのだと思います。 「らせん」は「リング」が終わるところから始まっているので、この二つに は矛盾が見られません。が、「リング」と「ループ」になると、かなりつじつ まを合わせるのが苦しい部分が出てきています。 ここでは、その部分について、わたしたちの理解できない点を挙げていきま す。 もし、これについての答えをお持ちのかた、ぜひこのページの下の欄から、 筆者にお返事を下さい。

● 「らせん」の中でよみがえった高山竜司と「ループ」の中で現実空 間から仮想空間「ループ」に戻った後の二見馨は、同一人物か?

「らせん」という物語と「ループ」という物語。この二つの小説をどのよう に位置づけるかの問題です。

まず、いちばん素直な考え方は、「らせん」と「ループ」は全く重なる物語 である、という取り方だと思います。 馨が「ループ」界に戻るために、竜司の死体の腹から暗号を出したりして、 安藤を復活のために関わらせるような細工をした。つまり、「らせん」の冒頭 の部分から、馨とエリオットがかかわっていた。 しかし、その場合問題になるのは、「らせん」の中で復活した高山竜司の人 格は、最後の安藤との会話から推しはかると、「ループ」の中で復活した高山 竜司(=馨)とは明らかに違う、ということです。「らせん」の最後の竜司の セリフは明らかに品のない、生前の竜司(浅川の見た竜司。高野舞の竜司観は ちょっと違うようですが)そのもので、どう考えても、これは馨のいいそうな セリフではありません。「ループ」の中での復活した竜司と安藤との会話は、 むしろ馨にふさわしいように書き直されています。 また、復活時(生後1週間後)の竜司の年令についても、「らせん」では 死んだ時と同じ年令(つまり、32歳)とあるのに対し、「ループ」では、馨 の年令(20歳)となっています。このへんにも食い違いがあるわけです。

この矛盾を考慮に入れると、もう一つの解釈の余地が生まれてくるわけで す。 つまり、「らせん」は現実空間に生きる人々(馨やエリオット)の介入なし の「ループ」界の行きつく末を描いたものではないか、というものです。つま り、「らせん」と「ループ」の最後の部分は一種のパラレルワールドになるの ではないかと考えられるわけです。 仮想空間の「ループ」界では、リングウィルスが猛威をふるい、人類は山村 貞子という一つの遺伝子に収斂され、進化をやめ、停滞してしまう。 一方、この「ループ」界の終焉を見たエリオットは、現実空間がたどりつつ ある同様の運命を阻止すべく、馨を「ループ」界に送ろうとするわけです。つ まり、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」と同じよ うな発想になるわけです。 そう考えると、上記の矛盾も解決するのではないでしょうか?

しかしながら、一つ疑問点が残ります。馨がウェインスロックで、ヴァー チュアル・リアリティのヘルメットをかぶって、「ループ」の世界を体験する ところがあります。その時、安藤に視点を固定して「ループ」界で起こったこ とを見るのですが、この描写に竜司はいっさいでてここないのです。というこ とは、実際に「ループ」界で起こったことは、「らせん」に描かれたこととは 違って、竜司の腹の中から暗号も出てこなければ、竜司の復活もない、という また別の展開になっているようでもあります。 さて、では、「らせん」で描かれた世界と「ループ」で描かれた世界とは いったいどんな関係になっているのでしょう? ご意見をお聞かせ下さい。

● ちょっとあら探しですが・・・

もうひとつ、これはどう考えても、作者のミスではないかと考えられる点が あります。それは、「ループ」の最後で、山村貞子を処女としている点です。 「ループ」全編を通して、神の存在が暗示されています。「ループ」界(仮 想空間)にとって現実空間が存在したように、この現実空間にも上位空間が存 在するのではないか、ということは作品の部分部分から読者が感じることだと 思います。そして、「ループ」界を創造したプロジェクト・チームがあったよ うに、現実空間にも創造主=神という存在があるのではないか、ということも 暗示されています。「ループ」最後の章のタイトルが「降臨」となっているよ うに、明らかに、作者は人類の救済のために下位空間に送られた馨をイエス・ キリストになぞらえています。そして、そのイメージをさらに重ねるために、 馨の誕生をキリストと同じように、処女懐胎に結びつけたかったのは、理解で きるのですが、これは「リング」と「らせん」を読んだ者にはすぐにわかる間 違いです。 「リング」では、山村貞子は最後の天然痘患者(これが「らせん」でポイン トになってくるわけですが)長尾城太郎に強姦され、肉体交渉を持ったことに なっています。また、復活後も、「らせん」で山村貞子は安藤と関係を持って います。というわけで、山村貞子は明らかに処女ではありません。

● 竜司の願いはかなえられたか?

「そちらの世界につれていってくれよー。」というのが、高山竜司の最後の 願いでした。それを聞いたエリオットが、仮想空間にあってそれを仮想空間と 見破り、さらに上位空間があることに気がついた高山竜司の知性に感心して、 彼の願いをかなえようと思ったわけですが、それは果たしてかなえられたと言 えるでしょうか? わたしはそうは思いません。確かにDNAは二見馨という高山竜司そっくり の肉体で再現できたでしょうが、そこに宿ったのは高山竜司とは全く別の人格 =魂でした。エリオットはDNAは再現できても、同じ魂を入れることまでは できない、という重要な点を見落としていたのでしょう。クローン人間の未来 を暗示しているかのようです。

● やっぱり「リング」がエンターテーメントの最高峰

「ループ」三部作の中では、わたしは「リング」がいちばん楽しめました。 読者をひきつける要素を持っているのだと思います。 まず、謎解きの要素があること。一種の読者参加になるわけです。読者も、 いつの間にか、主人公(浅川和行)と一緒になって謎解きに加わってしまいま す。 次に、一週間と謎解きの期限が決められていること。この緊迫感が、主人公 に完全に一体化している読者に伝染してしまうのです。また逆にこの緊迫感ゆ えに、ますます読者は主人公に深く一体化していくわけです。 普段は読むのが遅いほうのわたしですが、「リング」はあっという間に読み 終わりました。それは、上のような要素によるものだと思います。

● それでもやっぱり「ループ」三部作はすばらしい

あらさがしをしてしまいましたが、ここまで真剣に読ませる「ループ」三部 作はやっぱりすばらしい作品だと思います。「リング」と並んで、ホラーの大 作と呼ばれる瀬名秀明の「パラサイト・イブ」も読みましたが、こちらは疑問 も抱かずにさらっと読んでしまいました。傍観者的立場に終始してしまったと いう感じです。それと比較すると、「ループ」三部作は読者を巻き込む迫力を 持っていると思います。

● ぜひ、ぜひ、お便り下さい。

というわけで、他の読者からのご意見を心からお待ちしております。お便り をいただき次第、更新して、このページでご紹介します。下の欄から、メール をください。また、更新の通知を受けたい方も、下の欄から、件名に「更新通 知希望」と明記の上、メールを送信して下さい。

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