「フリー・マネー事件」(12月30日)

クリスマスを前にした22日、イングランド北部のダーリントンという町で起こった事件です。 ある銀行の現金支払い機で現金をおろすと、2倍になって出てくるという噂が広まりました。そこで、現場近くはお祭り騒ぎ。長い行列ができました。事の真相はこうです。本来なら10ポンド札を入れるべきところに、20ポンド札をセットしてしまったために、10ポンドをおろすと、20ポンド札が出てくるというわけ。パーティーハットを被って、「フリー・マネー」と叫ぶ人を始め、現場には行列を整理する人まで自主的に現れたそうです。また、自主的に利用は一人三回までという規則までできたとか。というわけで、混乱は全くなかったということでした。さて、問題の銀行側ですが、強制的に返金を求めることはしない、お客様が自主的に名乗りでてくれることを望んでいるとのことでした。このニュースのアナウンサーが、"Some hope" と結んだ後に、スタジオ関係者の笑い声が続きました。

いかにもイギリスらしいエピソードではないでしょうか。もしこれが日本で起こったら、どんな行動をとっていると思います?たぶん、一番最初に気がついた人が、銀行に通報してお祭り騒ぎはおこらなかったでしょうね。

イギリスによくあるアイリッシュ・ジョークでこんな小話があります。スコットランド人・イングランド人(この二人は何人でもいいのですが)アイルランド人の3人がギロチンにかけられました。最初の二人の時には、どちらも刃が途中で止まってしまいました。そこで死刑執行人も、「奇跡だ!これはきっと、死刑をやめろという神のご宣託に違いない」と感動。二人の囚人を無罪放免にしました。さて、三番目のアイルランド人がギロチン台について、ふと上を見上げると、ちょうどギロチンの刃がすべり落ちるところに釘が出ています。それが前二人の命を救ったのでした。そこで、このアイルランド人、早速死刑執行人に釘が出ていることを教えてあげました。そこで釘は打ち直されて、アイルランド人の死刑執行は予定通り執り行われました、という話です。

要するにバカ正直は、バカなだけであり、決して徳ではないということでしょう。みんながその恩恵にあずかれるなら、誤りを正す必要はない。そんなイギリス人の考え方が、今回の「フリー・マネー事件」にも伺われるような気がするのでした。


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