● 子供にとっての稼ぎ時
このガイ・フォークス・デーを中心に、10月31日のハロウィーンからクリスマスま
で、子供にとってはお小遣い稼ぎのシーズンになります。
ハロウィーンは、イギリスではアメリカほど盛んではありませんが、それでもこういう
お祭りはすぐに定着するものです。特に、子供にとって得になるような習慣は。
子供のための仮装パーティーが開かれたりします。また、各家庭を子供たちが訪ねて、
"Trick or Treat"(いたずらかお菓子か)と聞く習わしも実行されていますが、わが
ビーン村では、ここ数年静かです。(もしかして、あの家はケチだという噂がたってい
て、我が家が避けられているだけかもしれませんが。)数年前、10月28日に子供たち
の訪問を受けました。ハロウィーンには早すぎましたので、10月31日に出直してくる
よう追い返しましたが、まったく自分勝手な子供たちです。実はその年のハロウィーンは
月曜日でした。月曜日になると、学校は始まるし、(その前の週一週間は学校の半期の休
みにあたります。)翌日は学校があるので、金曜日の28日にハロウィーンをしてしまお
うと考えたわけです。
"Trick or Treat"とは言いますが、もしお菓子を準備していなかった場合は、お金でも
いいことになっています。
そして、クリスマスが近づくと、クリスマス・キャロル (Christmas carol) という小
遣い稼ぎの手段があります。伝統的には、大人によって合唱指導を受けた子供たちが、大
人の引率のもと、近所の家庭を訪れ、戸口でクリスマスの歌を披露し、お礼にお金をもら
うというものです。こうやって集めたお金で、家族にクリスマス・プレゼントを買ったり
します。(チャリティーのための大人バージョンもありますが、これは、家庭訪問ではな
く、繁華街やショッピングセンターなど人の集まるところに立って、行われることが多い
ようです。)ところが、これも最近は、安易な子供の小遣い稼ぎ手段になってしまってい
ます。やはり何年か前のことですが、12歳くらいの男の子二人が、我が家のドアを叩き
ました。ドアを開けると、この二人は思い切りへたくそな歌を、なるべく早く終わらせよ
うという意図丸出しに、ものすごい速さで歌ってくれました。向いの家に住むイギリス人
は、この子供たちが彼女の家に来た時、あまりの歌の下手さに、彼女の持っていた音楽テ
ープを聞かせ、「これがクリスマス・キャロルっていうものよ。」と教えたそうです。
ハロウィーンもクリスマス・キャロルも、密接な地域社会があってこそ成り立っていた
習慣だと思います。たぶん、昔は子供は社会の共有の財産という意識があったのでしょ
う。その地域社会のあり方が変わってきている以上、こうした習慣も残念ながら変わらざ
るを得ません。道であっても挨拶も交わさない知らない人のところに、ハロウィーンやク
リスマスだからといって、金をねだりに子供が出かけて行くのを親はどう思っているので
しょう。また、安全の面でも不安な点があります。アメリカ留学中の日本人高校生がハロ
ウィーンの夜、間違って知らない人の家に行き、泥棒と間違われて射殺された悲しい事件
がありましたが、アメリカでは、ハロウィーンに他人の家を訪れる時には、予め約束をし
ておくようです。最近では、イギリスでも、子どもがよその家を訪ねるのを、少し距離を
おいて大人が見ていたりするようです。わたしがビーン村に引っ越す前に住んでいた南ロ
ンドンでは、ハロウィーンの日に、夜8時すぎ、10歳にも満たないと思われる子供ばか
り5〜6人が大人の付き添いなしに、家々をまわっているのには驚きました。