Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第16回の目次

● 6月の行事
● 寿限無、寿限無、・・・今回は名前の話
● 一言イギリス英語講座 - "loo"
● けしの花と道路開発

     ● 6月の行事

春が来たのか来なかったのかわからないうちに、一般的に初夏と考えられる6月 に入りそうです。6月19日土曜日には、エドワード王子とソフィー・リース・ ジョーンズ嬢の結婚式も予定されています。6月といえば、天気もよくなるという ことで、野外の行事も目白押しです。(日にちは年によって変わりますが、ここに 掲げたのはすべて今年のものです。)

Trooping the Colour (6月12日)

エリザベス女王には誕生日が二つあるのをご存知ですか?本当のお誕生日は4月 21日ですが、毎年6月に国家元首の公式誕生日というのが祝われます。この日に は、近衛騎兵のパレードが行われます。"colours" は旗のこと。部隊の軍旗を持っ た兵士を女王が閲兵します。もともとは自分の部隊の旗を見る機会のなかった兵卒 に、軍旗を認識させるために始まった式典です。その後、1748年、エドワード 7世の時から元首の誕生日に行われるようになりました。このパレードは、ホワイ トホール、バッキンガム宮殿、および沿道など(それにもちろんテレビ)で見るこ とができます。また、グリーン・パーク及びロンドン塔では、礼砲が打たれます。

Royal Ascot (6月15日〜6月19日)

有名な競馬のレース。その名の通り、王室の方々の姿も見られ、特に Ladies Day は、上流階級の社交の場として有名です。そして、アスコットといえば、やっ ぱり女性の帽子ですよね。さて、今年の流行は?

Summer begins (6月21日)

夏至をもって夏の始まりとするわけです。イギリスの先住民族ケルト人の信仰ド ルイト教は太陽崇拝の宗教で、夏至は大きな意味を持ちました。現在でも、ストー ンヘンジにはこの日、現代のドルイト教信者たちが集まって儀式を行います。(確 か、夏至のある時刻にはストーンヘンジの石の影が意味のある形に並ぶ、とかそん なことを聞いたことがありますが。) Glastonbury Festival (6月25日〜6月27日)

イングランド南西部、サマーセット州グラストンベリで毎年行われる野外音楽祭。 (昨年は悪天候のため、会場は泥沼と化しましたが、それでも10万人が参加した そうです。)わたしはこのコンサートのためではないですが、グラストンベリを訪 れたことがあります。それはそれは不思議なムードの町です。商店街には水晶玉や タロットカードを売る店が軒を並べています。というのも、ここはあのアーサー王 伝説ゆかりの地、アバロンがあったところではないかと言われているため、60年 代くらいから、ヒッピーが集まってくるようになりました。音楽祭には、マニック・ ストリート・プリーチャーズ、コアーズ、REM、その他大勢の人気グループの出 演が予定されています。もっと詳しくこのフェスティバルについて知りたい方は下 記のHPをご参照下さい。 http://www.glastonbury-festival.co.uk/

Wimbledon (The Championships) (6月21日〜7月4日)

有名なテニスの選手権。彗星のごとく現れたティム・ヘンマン選手の一昨年の活 躍以来、近年、ウィンブルドンは盛り上がっていますが、今年はどうでしょうね。 http://www.wimbledon.org/

     ● 寿限無、寿限無、・・・今回は名前の話

二人のスパイス・ガールズに最近子供が生まれ、ちょっとした話題になりました。 (ちなみにヴィクトリア・アダムズとデイビッド・ベッカムの結婚式も、やはり6 月に行われます。エドワード王子の結婚式よりも話題になるのではないかと言われ ています。)ポッシュ・スパイスことヴィクトリア・アダムズ嬢の息子はブルック リン (Brooklyn) と名づけられ、スケアリー・スパイスことメルBの娘はフェニッ クス・チー (Phoenix Chi) と名づけられました。ポッシュ・スパイスとベッカムの 子供は、ニューヨーク滞在中にできたと思われることから、その地名にちなんで名 づけられたそうです。口の悪い人たちは、もしそれがブラックプールとかスカン ソープ(どちらもイングランドの地方都市)だったらどうするつもりだったんだろ うね、などと言っています。一方、スケアリー・スパイスの娘の名前のチーは、中 国語で qi とも書き、風水や太極拳などでいわれる「気」(エネルギー)のこと。

もっともこのような名前の付け方はあまり一般的ではありません。有名人だから なせるわざです。普通のイギリス人はすでにある名前の中から選んで子供につけま す。中には、自分で編み出してつける親もいるらしいですが、子供の将来を考える となかなかここまで勇気のある親は少ないようです。(絶対いじめられますよね え。)その点、有名人の子供はどちらにしろ生まれた時から人々の注目を浴びる存 在なので、あまり名前の影響はないかもしれません。

日本では親は願いをこめて子供の名をつけるようですが、イギリスではもっぱら 響きやその一般的印象などで名前を決めることが多いようです。意味を表す漢字を 使うため、日本では名前に意味を持たせることができるのでしょう。

このようなわけで、イギリス人の名前と言うのは、日本人と比較するとずっとバ ラエティーが少ないように思います。それでも、近年の国際化に伴い、外国の名前 やキリスト教以外の宗教の名前もずいぶん入ってきました。かつては、first name の代わりに christian name と言う言葉が使われたほど、よくある名前のほとんど は旧約聖書に出てくるヘブライ語の名前か、キリスト教の聖人の名前でした。その 他には、古代ギリシャやローマ時代に起源を持つ名前も少なくありません。また、 middle name といって、first name の後に複数の名前を持つ人もいます。寿限無で はありませんが、3つも4つもミドルネームを持つ人もいるようです。このような 場合、ミドルネームは、ご先祖様に対する敬意を表する意味で、家族に代々伝わる 名前がつけられる場合が多いようです。その他にも、ファースト・ネームと組み合 わせると響きがよいから、という理由でミドルネームがつけられる場合がありま す。

1997年にイングランド及びウェールズで生まれた新生児のうち最も多い名前 のトップ10は下記のようになっています。

女の子男の子
1Sophie1Jack
2Jessica2Daniel
3Chloe3Thomas
4Emily4James
5Lauren5Joshua
6Rebecca6Matthew
7Charlotte7Ryan
8Hannah8Samuel
9Amy9Joseph
10Megan10Liam
女の子のトップ3の語源ですが、ソフィーはもともとはギリシャ語で知恵を表す "Sophia" の愛称。転じて正式な名前に定着したようです。ジェシカはヘブライ語 から来ています。クロイーもギリシア語が元。男の子のほうに行くと、ジャックは もともとは "John" の愛称でした。2位のダニエル及び3位のトマスはともにヘブ ライ語に由来します。というわけで、だいぶバラエティーは増えてきたものの、やっ ぱり最も人気のある名前は伝統的な路線を踏襲しているようです。ただ、もともと は愛称であったものが正式な名前として定着しつつある例が増えているのが、最近 の特徴のようにも思えます。(圏外12位のケイティー、28位のモリー、同じく 男子18位のハリー、29位のジェイミーなど。) ちなみに、1954年の同様の統計によると、女の子のほうがスーザン、リンダ、 クリスティンの順、男の子はデイビッド、ジョン、スティーブンの順で人気があっ たようです。このうち、1997年のトップ50に入っているのは、31位のデイ ビッドと41位のジョンだけ。他は影も形もありません。

もっと詳しい名前の一覧表をご覧になりたい方は下記のページをご参照下さい。 (ただし、頻繁に更新しているようで、1997年のトップ50はもう掲載されて いないようです。5月24日現在では、1954年から1997年までのトップ1 0の一覧表をご覧になることができます。) Government Statistical Service http://www.statistics.gov.uk/

     ● 一言イギリス英語講座 - "loo"

トイレを婉曲に表す口語。20世紀初頭までには、すでに上流階級の人たちの間 で使われていたようです。第二次世界大戦後には中産階級にまで広まりました。今 では、あらゆる階級で日常語として使われています。(が、日本から来た友人が、 ヒースロー空港で「ルーはどこにあるか?」と聞いたら通じなかった、とぼやいて いました。聞いたのが実は外国人だったりして。)語源については、いくつか説が あり、はっきりとしたことはわかっていませんが、有力な説は二つあります。一つ は、フランス語の "Gardez l'eau" (水に気をつけろ)から来たもの。(イギリス 風に発音すると、「ガーディルー」となったそうです。)昔、下水道が普及する 前、しびん (chamber pots) の中身や汚水を窓から通りに投げ捨てました。その 時、このような言葉が警告として発せられたそうです。もう一つの説は、20世紀 初頭の鉄製トイレタンクの商品名、Waterloo から来たというもの。

スーパー・ルー 最近イギリスでもこんなモダンなトイレを見かけるよ うになりました。(写真)"Super Loo" と呼ばれます。 コイン式で、利用した後ドアを閉めると自動的にトイレ 全体が洗浄消毒されるそうです。が、落とし穴がありま す。15分経つと、自動的にドアが開くそうです。実際 に、ドアが開いてズボンをおろした男性と目があってし まった、という体験談もあるくらいです。これは、なん でもいかがわしい目的で利用されるのを防ぐためだそう です。「いかがわしいことだって3分で終わることもあ るし、ほんとの用事が15分かかることだってあるよね え。」とは友人の弁。そのとおり。設計者の方、ちょっ と考え直したほうがいいんではないですか? この超モダンなトイレは、イギリス人の間ではあまり利用されていないようです。 以前、週末の深夜番組(って結構ばかばかしいのが多いんですよね)で、スー パー・ルーの前でみんなで張っていて、出てきた人がイギリス人だったら1000 ポンド進呈というゲームをやっていました。5人ほどが笛や太鼓など文字どおり鳴 り物入りでお迎えする中、スーパー・ルーから出てきたのは、金髪の若いスウェー デン人女性でした。やっぱり、保守的なイギリス人にはちょっと斬新すぎる?

     ● けしの花と道路開発

いよいよバラの花も咲き始め美しい季節になってきましたが、最近うちの近所で 目につくのはけしの花。ポピーと言えば、西洋では戦死者を連想します。戦没者を 追悼する11月の Remembrance Sunday の近くになるとポピーの造花を胸につける 人がたくさん見られます。これは、戦場となった場所に翌春たくさんのけしが咲く ので、まるで亡くなった人たちの魂を象徴するかのように思われることから来まし た。というのも、このけしの花には、ひっくり返されたばかりの土を好んで芽を出 すという習性があるためです。同じような理由から、我が家の近所の新しくできた ばかりの道路際にもけしの花が一面に咲き誇っているわけですね。

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