Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第18回の目次

● 7月の行事
● Cornish pasty の話
● 一言イギリス英語講座 - "whingeing pom"
● ロンドンの暴動

     ● 7月の行事

現実の天気はさておき、暦の上では夏となりました。(イギリスの暦では夏至以 降、秋分の日までを夏といいます。結構乱暴ですが。)7月3週目くらいから夏休 み(イギリスの学校は9月始まりなので、ちょうど最終学期と新学期の間というこ とになります。)に入る学校が増えてきて、いよいよホリデー・シーズンとなりま す。この時期には、野外コンサートが各地の公園で開かれます。音楽にあわせて、 花火をあげるという趣向のコンサートもたくさんありますが、お子様向けではあり ません。というのも、イギリスの夏の日没は遅いので、夜10時の終了間際になる まで、花火があがらないところがほとんどです。(イギリスの花火シーズンは11 月。) Promenade Concerts (7月15日〜9月11日)

通称 "Proms" で親しまれている一連のクラシック音楽のコンサート。最初のコ ンサートは1895年8月10日に開催されたということですから、100年以上 の歴史を持つ伝統行事です。肩の凝らない雰囲気で、幅広い層の聴衆に安い値段で 音楽を楽しんでもらおうという主旨で始められました。クィーンズ・ホールが第二 次世界大戦中に爆撃で破壊されてからは、ロイヤル・アルバート・ホールに場所が 移され、現在に至っています。最近では、ハイド・パークに設置された大スクリー ンで、最終日にはさらに多くの人々がクラシック音楽を楽しめるようになりました。 始まった当時のチケットの値段は、1回のコンサートにつき1シリング(5ペン ス)、シーズンを通してのチケットが1ギニー(1ポンド5ペンス)だったそうで す。また、飲食や喫煙も許されていたとのこと。(ただし、声楽曲の演奏中はマッ チをするのは遠慮するようということだったそうですが。)

現在BBCがスポンサーとなっているこのコンサートには、充実したホームページ がありますので、興味のある方はのぞいてみて下さい。

http://www.bbc.co.uk/proms/

     ● コーンウォールが生んだ究極のお弁当 - Cornish pasty の話

胸を張って言っちゃいますが、わたしはグルメではありません。むしろ、味覚は あまり発達していないほうだと思います。でも、食べ物に対する興味だけは人並み 以上にあります。学生時代の夢は、山崎製パンに就職して、ピザまん、鬼まんに続 く新中華まんじゅうの開発を担当することでした。そういうわけで、わたしの食べ 物にかける情熱と好奇心をここでときどき披露させていただきたいと思います。 で、第一回は "Cornish pasty" の巻。

本場はその名の通りコーンウォール地方ですが、現在ではイギリス中で(世界中 でという説もありますが)愛されています。肉と野菜(ジャガイモ、玉ねぎ、ス ウィードと呼ばれるスウェーデンカブラ)をパイ皮で包んでオーブンで焼いたも の。このパイ皮については、ショートと呼ばれるさくさくのものとパフと呼ばれる ふわふわのものとの2種類があります。(市販のものはパフが多い。)起源につい てははっきりしませんが、ヘンリー8世(1491−1547)の時代にはすでに 存在したという説が有ります。

コーニッシュ・パスティーはコーンウォールの生活に深い関わりを持ちます。 コーンウォールの伝統的な産業は鉱業でした。特に、錫の国内有数の産地として有 名です。コーニッシュ・パスティーも鉱夫たちの弁当として愛されてきました。家 族の人が作ったパスティーを持って仕事にでかけるわけです。パイ皮は一方の端で まとめられており、(ちょうどがま口の金具部分のようになっています。)ここを 手で持って食べます。そこで鉱山の中でも手軽に食べられます。また、汚れた手で 持った端の部分は食べ終わったら捨てるだけ。焼きたてのパスティーは1時間以上 温かいままだということですが、昔は、ろうそくの上にシャベルをかざし、そこに パスティーをのせて温めなおしたそうです。また、二種類の中身の入ったパス ティーもあったそうです。たとえば、片側に普通の肉と野菜、もう片方の側には、 リンゴやミンスミート(干しぶどう・細かく刻んだリンゴ・香料・砂糖を混ぜたも の)などの甘いものと言った感じです。メインディッシュ・アンド・デザート・ イン・ワン、一粒で二度おいしいグリコのキャラメル顔負けです。中華まんでいっ たら、あんまんと肉まんが一緒になった感じでしょうか。すごい生活の知恵です。

鉱夫の他にも、かじ屋や技師などみんなのお弁当としてパスティーは親しまれる ようになりましたが、漁師だけは別だということです。というのは、コーンウォー ルには、パスティーを持って舟に乗ると悪いことがあるという言い伝えがあるため です。そこで、漁師たちはパスティーを岸に置いて漁に出るわけですが、戻ってき た時に誰のパスティーかはっきりわかるように、パスティーの片隅には頭文字が 入っているそうです。これは鉱夫の場合でも同じで、頭文字の入っていないほうの 端から食べると食べ残した場合(甘いほうは3時のおやつにとっておこうとか?)、 誰のパスティーかわかるので便利だったそうです。

コーニッシュ・パスティーは、それだけで完璧な食事 (meal)。そういうわけで、 ポテト・フライ (chips) を付け合わせに皿に盛ったりするのは邪道だそうです。 (その上、グレービーをかけて野菜を添えたりしたら殴られそうですね。)コーン ウォールが世界に誇る完全無欠のお弁当コーニッシュ・パスティーの巻でした。
これが手作りパスティー。
さくさくのショート皮です。
こちらは大手スーパー、
セインズベリのもの。
ふわふわのパフ皮です。

     ● 一言イギリス英語講座 - "whingeing poms"

今回はイギリス英語ならぬ、オーストラリア英語講座です。 "whinge" は、口語 で「ねちねち、ぐだぐだと不平不満を言う」。 "pom" または "pommy" はオースト ラリア・ニュージーランド英語で、イギリス人を指します。この言葉は1912年 までには使われるようになっていたということです。語源については、 "pomegranate" (ざくろ)という説が有力なようですが、はっきりしていません。 "immegrant" (移民)に語呂が似ているからということのようです。この他にも、 フランス語の "pomme" (りんご)や元囚人の定住者のシャツに押されていたスタン プ、 "Prisoners of Her Majesty" の頭文字 (POHMS) に由来するという説もありま す。

そういうわけで、これはイギリス人の一面を表すオーストラリア英語なのですが、 時に言い得て妙と思わせるものがあります。もっとも楽天的で有名なオーストラリ ア人にしてみれば、ほとんど世界中の他の国民は "whingeing" に見えるかもしれ ませんが。

     ● ロンドンの暴動

"International Day of Action" という言葉をお聞きになったでしょうか?6月 18日金曜日に、ケルンで開催されたG8会議と時期を合わせて、開発途上国に対す る債権を先進国が放棄することを求める運動がありました。ロンドンでも、 "Carnival against Capitalism" と銘打ったデモが行われました。主催者としては、 ストリート・カーニバルくらいの穏和なものを目指していたようですが、そんなわ けにいくはずがありません。デモとくれば、しかも反資本主義となれば、アナーキ スト(別名パンク)から、ただ暴れたいだけのフーリガンまで便乗するのは目に見 えています。そういうわけで、最後はやはり煉瓦の投げ合い、殴り合い、火炎瓶ま で現れる暴動へと発展しました。

それにしても、いつも思うのが暴力や秩序を乱すことに対するイギリス人の甘さ。 自ら法を遵守することを拒否した人々を法で守ってやる必要があるのでしょうか? 他人の人権を侵害する人々の人権まで重視しなければいけないのでしょうか?前時 代的な警察活動に戻れとはいいませんが、これでは暴動やフーリガニズムを助長す るようなもの。他人に迷惑をかけることに対して、もっと毅然とした態度で対処し てもらいたいものです。

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