● 一言イギリス英語講座 - "docu-soap"
前回はたいへんclassicなイギリス英語をご紹介しましたが、今回は思い切り
ホットな言葉を取り上げます。
この言葉は去年くらいから聞かれ始めたものでしょう。
ご覧の通り、合成語で、"documentary"と"soap"をくっつけた新しいテレビ番
組の種類です。
ドキュメンタリーはもうおなじみの番組スタイルですが、ソープは、ソープオ
ペラの略で、アメリカに語源をたどります。昼メロといったところでしょう
か。シリーズもののドラマで、その昔、主婦を対象としたところから、スポン
サーには、洗剤会社が多かったので、その名がつきました。(日本でも昼メロ
の提供は、石鹸会社ですよね。)
イギリスでは、日中に放送されているオーストラリア産の番組を除き、ソープ
は、7時半から8時半までのゴールデンアワーに放送されています。子供から
大人にまで男女の別を問わず、幅広い人気を持ちます。
内容は、エイズ、同性愛、十代の妊娠など、かなりシリアスな社会問題まで含
まれて、いくら7時半頃にアニメなどの適切な子供番組が放映されていないか
らとはいえ、こんな番組を10才くらいの子供が夢中になって見るのはどのよ
うなものかと思われます。イギリスの子供が早く大人になってしまうのもわか
るような気がします。
さて、前置きが長くなりましたが、実際に起こったことを記録するという意味
で、"documentary"、何人かの特定の人物に焦点をあて、この人たちを追う、
という意味で"soap"、という二つのジャンルのちょうど中間にあたるのがこの
新しい番組形式です。新しいテレビ番組のジャンルとして、ここ1〜2年のう
ちに人気が出、その数も急速に増えてきました。
たぶん、その先駆的な番組が、"Airport"だと思います。これはヒースロー空
港で起こる出来事を、アエロフロートの地上勤務係員ジェレミー他何人かのス
タッフを中心に描いたものです。
その他、自動車免許証取得を目指す人たちを追った"Driving School"などの
ヒットもあります。
事実は小説よりも奇なりというように、実際のハプニングのほうが脚本にし
たがって描かれたドラマより面白かったりすることが、これらのdocu-soapの
ヒットの原因と言えましょう。
しかしながら、これほど最近この種の番組が増えてきた背景には、低コストと
いう要因があることも見逃せません。
何ヶ月か前に、前述のジェレミーと、"Cruise"で一躍有名になったカリブ海
豪華クルーズ客船のエンターテイメント歌手、ジェイン・マクドナルドがトー
クショーに出演して、docu-soapブームについて語っていました。
それによると、番組作りにあたって、登場人物はいっさい出演料をもらってい
ないとのこと。彼らは、番組のために特別に演技をしているわけではないから
というのがその理由です。
例えばジェレミーがカメラの前でしていることは、彼の仕事であり、その仕
事に対しては、すでにアエロフロートから報酬が支払われているから、BBC
からは謝礼がでないというわけです。
もっとも、"Cruise"シリーズで一躍有名になったジェイン・マクドナルドは、
シリーズ終了後に作成された、彼女の結婚式までの準備を描いた特集番組につ
いては、出演料(それに結婚式費用もか?)を支払われたそうです。
出演料もかからなければ、セットもなし。docu-soapのヒットはいいのです
が、安易な番組作りが増えたのも確かです。リバプールのアデルフィ・ホテル
を題材にした"Hotel"では、従業員のつまらないおしゃべりまで聞かされて、
うんざりしてしまいました。
数が増えれば、それだけ駄作も増えるというわけでしょうか。
今回は、おまけで、二言講座です。
テレビ番組のジャンルで、もう一つ。"sitcom"。この言葉の歴史はもう少し
古くなります。確かな歴史はわかりませんが、60年代にはすでに使われてい
たのではないかということです。
"situation comedy"の略語で、一貫したストーリーがあるお笑い番組を指し
ます。特に定義には含まれませんが、一般的に現代に題材をとったシリーズも
のを意味するようです。
テレビの"Mr. Bean"などは、コント(寸劇、sketchと英語では言います。)を
つなげたもので、これはこのジャンルには入りません。
また、漫才は、"stand-up comedy"と呼ばれます。ただし、ぼけとつっこみの
あるかけあい漫才は日本と比べて少ないようで、最近の主流は、一人のおしゃ
べりです。ちなみに、「おち」はpunch lineといいます。