Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第24回の目次
● やっぱりイギリス人だって座りたい
● 独断と偏見によるタブロイド紙評
● 一言イギリス英語講座 - "rip-off Britain"
● Indian summer

     ● やっぱりイギリス人だって座りたい
     
       イギリスのパブと言えば、カウンターの周りに立って飲む光景がおなじみです     
     が、先日、興味深い調査の結果が発表されました。この調査は、「キャンペーン・
     フォー・リアル・エール」の委託によるもので、女性にとっての理想的なパブの
     条件についてまとめられたものです。第一位は、トイレがきれいなこと(98%)
     ですが、興味深いのは、堂々3位に「いすに座って飲める」(89%)というの
     が入っていることです。座らないと落ち着かないのは、われわれ日本人だけでは
     ないんですね。もっとも、第4位の「料理がおいしい」を考えると、パブの利用
     のしかたは、ちょっと男性とは違うような気もします。

       それにしても、懐かしいのは、日本の喫茶店。飲めれば、ワインバーでねばる
     こともできますが、さすがに、つまむものもなく、ワインだけで長時間話し込む
     のは、飲める人でもつらいものがあります。誰か、日本の喫茶店を輸入してー。
          
     

     ● 独断と偏見によるタブロイド紙評

       イギリスの新聞は実に個性豊かです。それに比べて、日本の新聞にはそれほど
     違いが見られません。これは、たぶん日本の新聞が見解の中立性というものを重     
     視しているからでしょう。しかし、完璧に中立的な報道というのは有り得るでしょ
     うか?人間が取材・執筆・編集している以上、なんらかの形でその人の見方が記
     事の中に表われるのは、しかたのないことだと思います。それならそれで、中立
     的な報道という建前を崩してしまったほうが、ずっと誤解が少ないのではないで
     しょうか?イギリスの新聞は、新聞全体の政治的立場、記者個人の意見というの
     が、記事の中にはっきりと表われています。最初から、この新聞は右寄り、左寄
     りというのがわかっていれば、読み手のほうはその分を割り引いて読むことがで
     きるわけです。このほうが、記者あるいは新聞社の判断によって選択された事実
     だけが列挙された記事を、真実と思って読むよりはずっと害がないのではないで
     しょうか?

       ちょっと前置きが長くなりましたが、そんなイギリスの新聞の中でも、思い切
     り個性あふれるタブロイド紙を、わたしの独断と偏見でご紹介していきたいと思
     います。


     The Sun 

       実は、わたしはこの新聞を読んだことはあまりありません。別にフェミニスト
     ではないですが、やっぱり3ページ目にトップレスのおねーちゃんの写真がでか
     でかと載っているような新聞は、ちょっと恥ずかしくて人前では読めません。対
     象読者層は労働者階級の男性。(でも、若い女性も結構読んでいるみたいですけ
     れど。)

       伝統的に右寄り。湾岸戦争の時には、かなり好戦的なスローガンが一面を飾り
     ました。日本大嫌い。昭和天皇に対する過激な非難を載せたことでも有名です。
     それをふまえて、昨年の天皇皇后両陛下の訪英前には、当時の橋本首相が特別な
     コメントを送ったのも、この新聞です。

       政治的には、保守党支持で知られていましたが、2年前の選挙の時には突然、
     労働党支持にまわり、国民をあっと言わせました。労働党の大勝はそのためだと
     いう噂も。そのくらい発行部数の多い新聞ではあります。

     The Mirror

       これも労働者階級対象。きっと、読者のほとんどは年金生活者なのではないか
     とわたしはにらんでいます。金持ち大嫌い。どうも貧乏人のひがみみたいなのが、
     記事に表われていて、わたしは好きではありません。保守党政権時代に、未婚
     の母への公共住宅の優先割り当て制度を廃止するという案を出した政府関係者に
     ついて、未婚の母から家を取り上げようという張本人がこんな大邸宅に住んでい
     る、という記事が航空写真付きで載りました。自分が働いて稼いだ金で大邸宅を
     建ててどこが悪い?問題は、納税者の金で(という意識すらなく、「国がくれる
     金」で)衣食住を一生保証されていると思っている未婚の母のほうである。

       それでも、記事はおもしろい。特に、短い記事。どこから、こんなおかしい話
     を見つけてきたの?というくらいおもしろい。そのかわり、5W1Hがぼろぼろ
     抜けているので、情報源としては役に立ちません。

     Daily Mail

       こちらのほうは、たぶん中産階級の下のほうを対象にしているのではないかと
     思われます。記事のほうはわりと中立っぽいですが、専属コラムニストによるエッ
     セイとか社説を読むと、かなり右寄りということがわかります。労働党嫌い。で
     も、保守党はちょっと頼りないので、全面的にバックアップする気にはなれない。
     そんな感じ。

       記事のほうは平均的。特におもしろい記事もないですが、まあまあ興味深い記
     事はあります。一応社会人として知っておきたい事件は網羅しているようなので、
     情報源としては使えるでしょう。

       土曜版にはどこの新聞にも必ずテレビガイドがついてきますが、全紙(高級紙
     も含めて)比較して、ここが最高とわたしは判断しました。

     Daily Express

       読者層は、メイルと似ているのではないでしょうか?中産階級の下。ただし、
     立場はもうちょっと、右寄り、保守党びいきかも。わたしがイギリスに来たばか
     りの頃は、「あなたの税金はこのようにして無駄遣いされている。」(主に、国
     の福祉に頼り切って全然働かない人たちによって)という記事に、一緒になって
     怒り狂っていました。この手の記事がお得意のようで、それから5年くらい経っ
     た時に、また久々に読んでみたら、「あなたの税金が無駄遣いされている例を書
     き送って下さい。」というコンテストをやっていました。そこには、それまでの
     投書で指摘された無駄遣いの額の累計グラフが。最高金額の無駄遣いを指摘した
     人には賞が贈られたようです。さすがに、かつては税金の無駄遣いに体中の血を
     煮えたぎらせていたわたしも、もう慣れっこになってしまい、これくらいではエ
     キサイトしないのでした。



     ● 一言イギリス英語講座 - "rip-off Britain"

       今回は、最近よく新聞で目にし、テレビやラジオで耳にする言葉を取り上げま
     す。「ぼったくり大国ブリテン」。"rip-off" は「ぼる」。(「暴利」を動詞化     
     した俗語で、不当な利益をむさぼること。あ、このコーナーって英語講座でした
     っけ?)最近のイギリスの物価の高さは、どこかで誰かが消費者を食い物にして
     いる結果である、というわけです。
     
       よく話題になるのが、新車の値段の高さです。イギリスの工場で生産されてい
     る車種ですら、大陸と比べて数千ポンドも高く売られています。このため、安い
     日帰りフェリー切符を使って、フランスやオランダで、車を買ってくる人たちも
     います。また、最近、わたしが頭に来ているのが、ラム(子羊肉、日本ででま
     わっているマトンとは違って、同じ羊の肉でも臭みがなくておいしいのです。)
     の値段の高さです。スーパーではあんなに高いのに、農家のほうでは、ラムの値
     段の暴落に苦しんでいるということです。いったい、農家とスーパーの店頭との
     間のどこで利益は吸い取られていっているのでしょう?
              


     ● Indian summer
     
       例年、8月末のバンクホリデーまでにはすっかり涼しくなっているイギリスで
     すが、このところ、インディアン・サマーと呼ばれる暑い日が続いています。こ     
     の時期の気温は、通常18度。ところが、ここ数日26度の暑さ(26度でイギ
     リスでは暑いと言うんですよ。)が続いています。この後2日ほど涼しくなった
     後、また暖かくなるそうです。えっ?天気のことをここで書いても大丈夫かって?
     実は、来週から一週間、真夏のスペインに行ってくるのです。だから、イギリス
     の天気が崩れようと、全然構いませーん。
     


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