Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第25回の目次
● イギリス人は暑がりか?
● 苗字の話
● 一言イギリス英語講座 - "keep up with the Joneses"
● ここも安全ではない

     ● イギリス人は暑がりか?
     
       かつて、わたしが東京の外資系の会社で働いていた頃、職場では、毎日のよう     
     に、イギリス人と日本人との間で闘いが繰りひろげられていました。空調のオン・
     オフ合戦です。日本人が寒いので空調を切ると、すかさず、イギリス人がスイッ
     チを入れる。これの繰り返しです。この光景を目にして、イギリス人って、暑が
     りなんだなあ、と思っていましたが、こちらに来ても、やはりその印象は変わっ
     ていません。もちろん、個人差がありますので、たまに真夏にオーバーを着て、
     毛糸の帽子をかぶっているおばあさんを見かけることもあります。しかし、一般
     的に、イギリス人は日本人より暑がりであるといえそうです。その原因は、平熱
     の高さにあるのではないかという仮説を長年わたしはあたためてきていましたが、
     その説が最近証明されました。イギリス人向けのスペイン語学習本の中に「わた
     しの平熱は37度です。」という練習文が載っていたのです。日本人の平熱は通
     常35度台であると聞いていますので、これからすると、37度という平熱はか
     なり高いことになります。普通の日本人だったら、もう病気です。
       うーん、わたしたちはこんな人たちと空調をめぐって毎日闘っていたわけね。     
          
     

     ●苗字の話

       第16回では、名前のほうの話をしましたが、今回は苗字について取り上げて
     みたいと思います。

       まず、苗字の由来ですが、もっともポピュラーなのが、名前から派生したもの     
     です。これに、接頭語、あるいは接尾語がついて苗字となりました。接頭語には、
     ゲーリック語の mac 、ウェールズ語の ap または ab 、ノルマン人のフランス
     語の fitz などがあります。スコットランドやアイルランドでよく見られる mac 
     という接頭語は、「(だれそれ)の息子」を表します。マクドナルドは、ドナル
     ドさんの息子というわけですね。また、アイルランド人によくある O' という接
     頭語は「だれそれの孫」を表します。ライアン・オニールのオニールは、ニール
     さんの孫という意味です。接尾語としては、英語の s や son が挙げられます。
     これも「だれそれの息子」を表します。

       この他に、地名や場所(たぶん出身地を表したのでしょうね。)が源となった
     ケースもあります。Bradford, Redhill, Hall などはその典型です。また、職業
     に由来するものには、Smith, Glover, Sheppard などがあります。ニックネーム
     から来た名前には、Blake, Boot, Cape などが挙げられます。お気に入りの洋服
     から来た例が多いようです。Winter, May などという苗字は、季節に基づいた苗
     字の典型。また、ステータスに基づくものには、 Bachelor など。

       イングランドに苗字が登場したのは、ノルマン人征服直後(11世紀)です。
     ノルマン人によってもたらされました。"de 〜" というように、北フランスの自
     分の領地の名前が苗字として使われました。
       スコットランドの苗字も、ノルマン人に由来するものが意外に少なくないよう
     です。Sinclair は、スコットランドの典型的な苗字と思われていますが、これ
     も実はノルマン人に由来するそうです。他には、地名や英語・ゲーリック語に語
     源をたどるものがあります。
       ウェールズで苗字が使われるようになったのは、ずっと遅く、18世紀になっ
     てからだそうです。16世紀頃には、すでにイングランドの官僚と関わりのある
     人々の間で、苗字が使われていましたが、一般庶民にまで普及したのは、18世
     紀以降です。その歴史から言っても、英語の名前が多いようです。また、下記の
     表からもわかるように、一定の地域にある一つの名前が集中していることでもよ
     く知られています。そのため、同姓同名が多いので、"Jones the Post" (郵便
     配達夫のジョーンズ)というように、職業などで区別しているようです。

       7月に選挙人名簿に基づいたイギリスで最も多い名前の一覧表が、ある信用調
     査機関から発表されました。
     

名前最も集中している地域人数
1SmithLerwick(シェットランド諸島)514,898
2JonesLlandudno(北ウェールズ)391,909
3WilliamsLlandudno(北ウェールズ)267,408
4BrownGlashiels(スコットランドに近い
イングランド北東部)
242,765
5TaylorOldham(イングランド北西部)236,123
6DaviesSwansea(南ウェールズ)202,773
7WilsonKilmarnock(スコットランド)173,961
8EvansSwansea(南ウェールズ)161,723
9ThomasSwansea(南ウェールズ)144,591
10JohnsonLerwick(シェットランド諸島)138,554
注:人数は、その苗字が、選挙人名簿に現れる回数を表します。
第一位のスミスは、イングランドの苗字で上記のように職業(かじ屋)に由来 する苗字です。 第二位のジョーンズは、イングランド及びウェールズの苗字で、名前の John から来ています。特に、ウェールズにとても多いことで有名です。(ウェールズ で石を投げれば、ジョーンズに当たる。)また、意外に知られていないのが、ユ ダヤ人の名前でもあることです。 第三位のウィリアムズはイングランド及びウェールズの苗字です。ノルマン人 の名前(征服王の名前そのものでもあるわけですが)、William から来ています。 第四位のブラウンはイングランドの名前で、ニックネームに由来します。たぶ ん、髪が茶色だったとか、顔が浅黒かったか、茶色の洋服が好きでそればかり着 ていたとかそんなところからついた苗字と思われます。 第五位のテーラーはイングランドの名前で、職業(仕立て屋)から来ています。 第六位のデイビスはイングランド・スコットランド・ウェールズ・及びユダヤ 人の苗字で、 David という名前から来ています。 第七位のウィルソンは、第三位のウィリアムズと同じ語源。 第八位のエバンズは、ウェールズでは、Ifan または Evan から来ており、スコッ トランドでは、Ewan が元になっています。いずれも、英語の John に相当します。 ユダヤ人の名前でもありますが、こちらのほうの語源ははっきりしていません。 第九位のトマスは、イングランド・ウェールズ・コーンウォールの苗字。中世 において人気のあった聖人の名前、Thomas から来てます。 第十位のジョンソンは、イングランドの名前で、ヘブライ語の人名ヨカナンに 由来します。 いかがでしたか?順位のほうは予想通りだったでしょうか? わたしの友人は、全盛期のデュラン・デュラン(イギリスのロックグループ) のファンでした。デュラン・デュランは、当時5人からなり、そのうち、3人が テイラー姓でした。しかも、この3人には、血縁関係はまったくなし。それで、 彼女には、テイラーというのは、イギリスによくある苗字なのだという印象があっ たようですが(なんと言っても、5人に3人の割合ですものね。)この調査はま さにそれを裏付けるものでした。

     ● 一言イギリス英語講座 - "keep up with the Joneses"

       「近所の人たちの生活水準に負けまいとして張り合う。」(たとえば、隣の人     
     が壁掛けテレビを買ったら自分も買う、というように。)実は、アメリカから来
     た言葉なので、今回は厳密にはイギリス英語講座ではないのですが、メイン・ト
     ピックの苗字の話にちなんでこの慣用句を取り上げてみました。イギリスでも広
     く用いられている言葉です。文字どおり訳すと、「ジョーンズ家に遅れをとらな
     いようにがんばる。」1913年から1931年の間に、ニューヨークの「グ
     ローブ」誌に連載されていたアーサー・モーマンド作の漫画、"Keeping up with
     the Jones" に由来します。もともと作者は、タイトルを "Keeping up with the
     Smiths" にするつもりだったそうですが、実際のお隣さんの名前がスミスであり、
     またこの人たちをネタにするつもりもあったので、スミスを避けて、ジョーンズ
     にしたそうです。アメリカでも、スミスとジョーンズはよくある苗字なんですね。
              


     ● ここも安全ではない
     
       前々回で、バイク盗難の話をしましたが、今度もまたまたショッキングなニュー
     ス。ビーン村の "High Street" (普通、この名前のついている通りは、町の目
     抜き通りですが、ビーン村のは、パブが一軒と郵便局兼雑貨屋が一軒、あとは住     
     宅が数軒あるだけです。)を若者が歩いていたところ、突然15〜16歳の少年
     3人組に襲われ、現金と携帯電話を奪われた、というものです。
       やれやれ、いよいよ我がビーン村も都市部の仲間入りか。
     


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