Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

最終更新日 7月11日

このコラムはわたしの友人の経営するアイメックス社のホームページ、"EL PUENTE"を間借りして、一昨年8月下旬に始まりました。この号で、連載も39回目となりました。バックナンバーはこちら。また、このコーナーを一早くお読みになりたい方は、ぜひ、メールマガジン版に読者登録をなさって下さい。

最新号の目次
● 最近のニュースから
● イギリスで結婚をする
● 一言イギリス英語講座 - "cardigan"
● 最近の結婚事情

● 最近のニュースから

思わず笑ってしまった最近のニュースを二つ。まず、5月にロンドン市長に選出されたケン・リビングストン氏ですが、今年も大晦日に大花火大会を催すことを計画しているそうです。理由は前年大好評だったから。今年は、「本当の21世紀の到来」ということでお祝いするんでしょうか?

もう一つは、画期的なタバコの話。現在、ガンを予防する煙草が開発されつつあるそうです。なんでも、効果があるのは、子宮けいガンだとか。肺ガンのほうは大丈夫なんでしょうか?

● イギリスで結婚をする

(このコラムは、6月21日にメールマガジンとして配信されたものをホームページ用に編集しなおしたものです。)

6月といえば、ジューン・ブライド。6月といえば、一年のうちで最も美しい季節というのが定説です。エリザベス女王の本当の誕生日は4月21日ですが、公式の誕生日は6月の土曜日になっています。パレードなど野外の公式行事のためには、4月よりは6月のほうが都合がよいということのようですが、そこは、イギリスです。6月だからといって、必ずしも天気がよいとは限りません。それはともかく、第34回で取り上げた英国の離婚事情とは順番が逆になりましたが、今回は、イギリスの結婚式についてです。

イギリスで結婚する場合、スタイルは3つ。registry office または register office と呼ばれる戸籍登録所(と訳されるようですが、戸籍はないので、これは適切ではないような気がします。ここでは登記所とします。)で結婚する場合、英国国教会の教会で結婚する場合、そしてそれ以外の場所で結婚式を挙げる場合の3つです。一番最後の手段は、数年前に新たに加わったばかりです。ホテル、城など、予め許可を受けている施設(野外は不可)で結婚式を挙げることができます。(披露宴はずっと以前からありましたが、法的効力を持つ結婚式が可能になったのは、ここ数年のことです。)手続きは、登記所で結婚する場合に準じます。それに加えて、式の会場となる施設との手続きが必要になるだけです。日本では、婚姻届に判を押して、役所に持って行く、というのが一番シンプルな結婚の方法だと思いますが、イギリスでこれに当たるのが、登記所での結婚です。しかし、この場合にも、簡単なセレモニーを伴います。今回は、わたしの経験をふまえながら、登記所での結婚式についてご紹介していきたいと思います。

まず結婚を思い立ったら、結婚式を挙げたい登記所で希望の日時を予約します。12ヶ月前から予約は可能です。そして、自分の住んでいるところの登記所にでかけ、結婚の通知 (notice) を Superintendent Registrar (登記係長って言うんでしょうか?)に提出します。二人が別々の地区に住んでいる場合には、それぞれの地区の登記所に提出します。この時必要な書類は、パスポートか出生証明書のような身分証明書(オリジナル)、離婚者の場合は離婚の最終判決書(離婚証明書になります。詳しくは第34回を参照して下さい。)、寡夫・婦の場合には夫・妻の死亡証明書、18歳未満の場合には親の同意書(結婚は16歳からできます。)などです。

さて、登記所での結婚には二つの方法があります。certificate によるものと licence によるものです。サーティフィケートの条件は、通知の前最低7日間その地区に住んでいること。通知の提出後、結婚まで丸21日間待たないといけません。そんなに待てないという方には、ちょっとお値段は高くなるそうですが、ライセンスという方法があります。翌々日には結婚できますが、通知提出前最低15日間、その地区に住んでいないといけません。(この方法は、2001年1月に廃止されるということです。)通常はサーティフィケートによる結婚という方法になりますが、この方法で通知が受け取られた場合、21日間、登記所の掲示板に通知が貼り出されます。この21日間に異議を唱える人がいなければ、晴れて結婚の段取りとなるわけです。もし、みなさんが登記所に行かれることがあったら、ぜひこの掲示板を見て下さい。そこにはいろいろな人生のドラマがあるはずです。並んだ男女の現住所や年齢、現住所での居住期間などからいろいろなストーリーが想像されます。が、一番おもしろいのは、職業欄です。みなさん、自分の職業をいかにかっこよく表現するかでいろいろと努力をされています。うーん、こういう言い方があったのか、なんて感心させられたりして。

さて、こうしてめでたく結婚に異議を唱える人が現れないと、スーパーインテンデント・レジストラーによって、結婚許可証が発行されます。この許可証は登記所に保管され、12ヶ月有効です。逆に言うと、12ヶ月以内に結婚式を挙げないといけません。そして、晴れて結婚式当日という運びになりますが、ここで忘れてはいけないのが、二人の証人。わたしが結婚式を挙げたルウィシャム登記所は、図書館の隣りにありますが、証人を忘れたカップルがあわてて、図書館に行って閲覧者の中から、証人を調達してくるという風景がたまに見られるそうです。

通常、登記所には、40人〜80人くらいの人数は収容できる式場が用意されています。また、待合室の設備もあります。(登記所によって、規模は異なります。)上記のルウィシャム登記所の場合は、土曜日の午後と日曜日を除く毎日、20分間隔で式の予定が組まれています。(土曜日の午後も式を受け付ける登記所もあります。)規模のほうも、ふたり(プラス証人)から数十人のゲストを含む比較的大規模なものまでいろいろ。登記所の結婚式は、宗教色の無いものというのが原則ですが、その上でならば、音楽を流したり、詩の朗読を行ってもかまわないそうです。ビデオの撮影もOK。ただし、カメラは控えましょう。レジストラーの注意をそらし、式進行の妨げとなります。一番最後に写真撮影の時間を設けてくれますので、ご心配なく。

さて、新郎新婦は式当日登記所に到着したら、まずレジストラーに会い、結婚証明書の一部記入を行います。ここで、父親の職業を聞かれますので、心しておきましょう。出生証明書もそうですが、(死亡証明書は見たことがないのでわかりませんが)なぜかこの父親の職業欄というのが必ず登場します。階級制度の名残なのでしょうか?日本にいると、ほとんどの人は、職業を会社員で済ますと思いますが、これはイギリスでは通用しません。会社で何をしているかが問題になります。わたしも、父の勤めている会社が何をしていて、父がどの部署で働いているかは知っていましたが、実際に何をしているのかは知りませんでした。イギリスの登記所で結婚をお考えのみなさん、結婚式の前にはお父さんが会社で何をしているか、きちんと聞いておきましょう。(もっとも、適当に記入しても問題はありませんが。)

さて、こうして手続きが終わり、結婚式の順番がやってきます。新郎新婦入場です。ゲストはすでに着席しています。証人二人は、新郎新婦のそれぞれの横に座ります。レジストラーが式を進め、誓いの言葉があります。希望すれば、式に先立って、この新郎新婦の誓いの言葉を手に入れることができます。アンチョコがあると、多少気が楽ですよ。結婚相手の名前の長い場合は特に注意が必要です。(イギリス人の中には、ミドルネームの多い人もいますからね。)そして、指輪の交換。この後、結婚証明書に新郎新婦・二人の証人のサイン。誓いのキス(任意)。最後に、写真撮影となります。

わたしの経験からすると、ジョークも飛び出すアット・ホームな雰囲気でありながら、同時に厳粛な雰囲気も感じられてたいへんいい結婚式スタイルだと思います。(もっとも、司会進行役にもよるのかもしれません。わたしの時には、エリザベスさんという女性のレジストラーが挙げてくれました。ユーモアのセンスのある、すてきな人でした。)簡素でありながら、中身は充実していて、お勧めです。

● 一言イギリス英語講座 - "cardigan"

日本でもおなじみの、前がボタンどめになった毛糸のセーターのことですが、これは第7代カーディガン伯爵の名前から来ています。1868年にはすでにこの言葉が使われていました。カーディガン伯はクリミア戦争の時の指揮官で、クリミア半島の寒さから身を守るために、このような衣料を着たと言われます。同じクリミア戦争時代に由来する衣料としては、バラクラーバ (balaclaba) があります。これは、現代では強盗などが覆面代わりによく使いますが、毛糸でできたもので、目と口の部分を除き、頭から首がすっぽり覆われるようになっています。クリミア半島の南端に位置し、激戦が繰り広げられたバラクラーバという村の名前に由来します。また、ラグラン袖も、この戦争に起源をさかのぼります。同じくクリミア戦争の指揮官、ラグラン卿 (Lord Raglan) の名前から来ています。

このクリミア戦争、イギリスの戦争史の中では、指揮官の愚かさによって多大の犠牲を出した戦争として知られ、階級社会の害悪の象徴のように言われますが、こうして後世に名が残った指揮官たち、あの世ではどんな気持ちでいるのでしょうか?

● 最近の結婚事情

今回は、登記所での結婚についてご紹介しました。「ウェブ・ウェディング」という会社の行ったアンケートによると、女性が結婚式を挙げたい 場所の人気ナンバーワンは、教会だそうです。かつてわたしの会社にいた、ばりばりのキャリアウーマンも、「結婚するんだけど、彼が再婚なので、結婚式を挙げてくれる教会を見つけるのが大変なのよ。」なんて言っていたのを思い出します。やっぱり、イギリス女性にとっても、白いウェディングドレスを来て、教会で結婚式を挙げるのは憧れなんですね。(余談ですが、16世紀のスコットランド女王、メアリ・スチュアートがフランスで結婚式を挙げた時、彼女の白いウェディングドレスはフランス人に大きな衝撃を与えたそうです。当時のフランスでは、白は死に装束で、縁起が悪いと思われていたからです。この結婚式の後1年足らずで、義父である国王アンリ2世は不慮の死を遂げ、後を継いだ夫と共に、メアリはフランス王妃の座につきました。ところが、その2年後には、彼女の夫も病死し、その後も男運には恵まれませんでした。)

本来なら、これほど人気のある教会での結婚式もここで取り上げるべきなのですが、なにぶん、わたしに経験がないもので、今回は控えました。後日経験者にインタビューでもできれば、改めてご紹介したいと思います。また、読者のみなさんからの情報にも期待しています。

わたしも先日披露宴に行ってきました。この新婚さんたち、実はもう3年以上も一緒に暮らしていて、二人の間には2歳の子供もいます。最近、こういうパターンが結構多いみたいです。長年、結婚しないでいるカップルというのは、結婚という法律による結びつきを否定して、お互いの独立を保っているのかというと必ずしもそうでもないのですね。いざ結婚しようということなると、常夏の島で結婚式を挙げたいとか、白いウェディングドレスがいいとか、大騒ぎをする人たちも少なくありません。要するに、なんとなく彼(または彼女)のところに引っ越したら、そのまま同居生活が長くなって、そのうちに子供も生まれてしまった、というような成り行き派が多いのでしょう。ポリシーによる独身主義者というのは少ないのかもしれません。

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