Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第14回の目次

● Millennium Babies
● イギリスの献血事情
● 血液型の話
● 一言イギリス英語講座 - "boot sale"
● 日本人とイギリス人のマニアック度くらべ

     ● Millennium Babies

4月8日、9日は2000年1月1日生まれの子供がもっともできやすい日とい うことで、多くのカップルが子作りに励んだようです。この後も同じような目的を 持つカップルの努力はしばらく続くそうです。2000年1月前後にはちょっとし たベビーブームが予想されます。これに対して、関係当局は、1月1日はただでさ え医療関係者の人手不足が予想されるところにもってきて、出産が多くなると、集 中治療の必要なケースが発生した場合、医師の手がまわらないのではないかと心配 し、警告を発しています。イギリス人はギャンブルが好きですから、一攫千金を狙 う人は少なくないと思います。イギリスで、2000年初めての(21世紀初めて てと誤解している人も多いですが)子供ということになれば、たくさんのスポン サーがつくことでしょう。しかし、子供は一生ものです。よくよく考えてから行動 に移ってほしいものです。

     ● イギリスの献血事情

今回はちょっとマニアックなテーマで迫ります。筆者紹介のコーナー "Beanstalk" を(サイト名と同じなのでちょっとまぎらわしいですが。)読んで下さった方なら ご存知のことでしょうが、わたしの趣味は献血です。日本にいた頃は、八王子赤十 字血液センターの手帳に、献血センターのスタンプがたまっていくのを見ては喜び にひたっておりました。(母が手帳を洗濯し、スタンプが全部消えてしまった時に は泣きましたが。)そして、ここイギリスに来ても献血は相変わらずわたしの趣味 です。というわけで、今回は筆者の趣味の紹介を兼ねて、イギリスの献血について 書いていきたいと思います。実は、このテーマは、本HPの常連訪問客でもある (感謝)会社の友人のすすめにもよるものです。

本題に入る前に、なぜ献血が好きなのか?というFAQ(よくある質問)から。 それは、これほど有効な人助けはない、ということです。例えば、慈善団体に10 ポンドを寄付したとします。そのうちのいくらが実際に困っている人の手に渡るで しょうか?たぶん多くは、団体の運営費(役職員の給与や諸経費)に消えてしまう でしょう。その点、献血は、あげた分全部が必要としている人に行くわけです。ま た、ホームレスを自称する人の中には、一日の物乞いを終えた後、角の向こうに停 めておいた車に乗って、自分の家に帰っていくような不届き千万な連中もいます。 この点でも、献血は、本当に必要としている人に必要としているものを与えること ができるわけです。というような立派な理由もありますが、結局のところ、一度す るとやみつきになるというのが、献血のこわさです。

では、本題に入ります。献血活動を行っているのは、イングランドでは、"The National Blood Service" という団体です。(ウェールズ、スコットランド、北ア イルランドにも、それぞれの地域を担当する同様の団体があります。)"National Blood Service" の14の地域センターが、常設の献血所や献血車を利用したり、 各地の施設(病院、会社、体育館や集会所など)を巡回して、献血活動を行って います。

さて、ここからは実際の献血の手順です。(なるべくさらっと書きますので、 気の弱い方、ビジュアルな想像力のたくましい方も安心して下さい。)献血所に入 ると質問状を渡されますので、これに記入をします。質問は主に、マラリア、エイ ズ、B型及びC型肝炎など(最近加わったのが、人間版狂牛病と呼ばれるクロイツ フェルト・ヤコブ病)に感染していないかどうかを確認するためのものです。少し 前までは、日本もマラリアの危険地域に入っていました。日本脳炎のせいでしょう か?記入済みの質問状を提出し、名前・住所の登録をします。それから、比重の チェック。これにパスすると、次はいよいよ本番。この間、頻繁に住所・氏名・生 年月日の確認があります。(混同があるとこわいですよね。)基本的には右利きの 人は左腕から血を採ります。(もちろん、有望な血管を探してからですが。)実際 に献血針を挿入するのは、婦長クラスの熟練者のようです。以前は、献血針を挿入 する前に、局部麻酔の注射がありました。その頃は、二回も針を入れられるよりは、 多少痛くても本番だけでいいのに、と思いましたが、やっぱり局部麻酔はあったほ うがいいと前回は(文字どおり)痛感しました。経費節減のためでしょうか?パン フレットによると、希望すれば局部麻酔をしてもらえるようです。一回に採取され る血液の量は、450ミリリットル。しばらく横になって休んでから、ご褒美の時 間です。この時、献血者係の人が、お茶係の人に、冷たい飲み物(普通、思いきり 薄いオレンジジュースかレモンジュース)か、暖かい飲み物(コーヒーか紅茶)の どちらでもいいかの指示をします。わたしの観察及び経験からすると、冷たい飲み 物を指定された人は「危ない」人や初体験の人の場合が多いようです。どちらでも いいと言われた場合は、貧血などの後遺症(?)の可能性が小さいとみなされたと いうことのようです。献血後、暖かいものを飲むと血液の流れを急変させたりして よくないのでしょうか?このへんはさだかではありません。最近の日本の献血では、 テレフォン・カードをくれたり、食べ物・飲み物もなかなか豪華版のようですが、 (わたしが常連だった頃は、三角パックのオレンジジュースを最後に一個くれただ けでした。)わたしがこちらで行く献血所では、上記の飲み物の他に、食べ物はビ スケットまたはポテトチップスだけです。輸血が必要になった時、常連献血者には 優先的に血液を手配してくれる、などというような制度もないようです。売血もあ りません。つまり、イギリスの献血活動は人々の純粋な善意によって支えられてい るわけです。

もう一つ、わたしが八王子赤十字センターの常連であった頃には耳にしなかった ことがあります。それは、「成分献血」です。これは、赤血球、血漿、血小板(そ れに時折、白血球も)という血液成分の中から特定の成分のみ(多くの場合は血小 板)を提供する方法です。これに相当する英語は "apheresis" です。(とうとう 専門用語まで出てきてしまいました。これであなたも献血通。)通常の献血です と、次の献血まで12週間から16週間をおかないといけません。(と "National Blood Service" では言っています。わたしが日本にいた頃はもっと頻繁にしてい たような気がしますが。当時は250ミリリットル献血だったからかもしれませ ん。)これは献血によって失われた鉄分を十分に回復するための時間を与えるため です。しかしながら、成分献血の場合、赤血球は失わないので、2週間から1ヶ月 の間隔で献血をすることができます。一方、この方法の短所は、時間がかかること、 特別な装置のある常設献血所でしか献血を行えないことです。"apheresis" は、採 血された血を特殊な装置にチューブで送り、そこで攪拌分離し、必要な成分だけを 抜き取って、また血を体内に戻すという作業を繰り返す方法です。そこで、通常の 献血が10分ほどで終わるのに対して、この方法だと1時間強かかります。このよ うな事情から、イギリスでは、成分献血をするのは専用装置のある常設献血所 ("Static Clinic"と呼ばれているそうです。)の近くに住む人、またはその近辺 で働いている人に限られているそうです。

最近導入されたのが、献血者カード制度。個人データの収められた磁気テープが ついたプラスチックのカードです。献血時の事務処理を簡単にするための新案です が、このカードは献血回数によって色が異なっています。わたしに送られて来たの は、5回〜9回献血をした人用の青いカード。ますます、常連献血者の情熱をかき たてられます。成分献血専門の人には一種類の特別カードだけ。上記のような理由 から、通常献血とは献血頻度が異なるからでしょう。また、最近読んだタウン紙の 記事によると、献血95回以上の人を招いてのお食事会が最近行われたそうです。 (さすがに集まった人は年配の方ばかりだったようですが。)目指すはお食事会 と紫カード(100回以上の人用)!!

     ● 血液型の話

イギリスには自分の血液型を知らない人がたくさんいます。たぶん、献血をす る機会のない人、しようとする人があまり多くないからではないでしょうか。(こ の冬、"National Blood Service" では、イギリスのセクシー俳優ナンバーワン、 ショーン・ビーンの声を使ったコマーシャルをかなり大々的に放送していました。) 先日も会社で献血があった後、いい年をしたイギリス人の大の男が「いやー、僕は 注射針を見ただけで気絶しちゃうたちだから。」なんて情けないことをのたまって おりました。(イギリスには、「いい年をした」とか「大の男」という既成概念が ないのですね。まったく、イギリスの「男は楽だよ」です。)それはともかく、そ ういうわけで日本のように血液型占いや血液型性格判断は一般的ではありません。

"National Blood Service" のホームページによると、イギリス北部に住む人に はO型が多いということです。これは、かつてバイキングがイギリスにやって来る 前まではほとんどのイギリス人がO型であったことの名残だそうです。その後のさ まざまなヨーロッパ民族の侵略により、イギリス南部ではA型が多くみられるよう になったということです。また、B型は白人には少ない血液型で、アジア人(イギ リスでアジア人という時は主にインド系の人たちを指します。)の25%がB型で あるのに対して、白人では9%しかいないそうです。

     ● 一言イギリス英語講座 - "boot sale"

これから暖かくなると、"car boot sale" が増えてきます。"boot" は自動車の トランクのこと(トランクはアメリカ英語です。)。自動車のトランクに不要に なったものを入れて会場(農場、校庭など)へ行き、そこでトランクを開けて中身 を売ったことからこの名前がつきました。現在では、ちょっとした屋台を出す人た ちも少なくありません。売りたい人たちは朝早く会場入りし、出店料(乗用車は 10ポンド前後)を払って車を停め、店をひろげます。そこへ後から来た買い物客 がひやかしに立ち寄ります。(1ポンド前後の入場をとるところもあれば、ただの ところもあります。)アメリカなどでよくあるガレージセールと違って、売った品 物について後で苦情を持ち込まれないのが、売り手にとってはいいところでしょう か。逆に買い手にとっては同じ理由で、中古の電気製品などを買うのにはちょっと 勇気が要ります。売られているものは実に多様です。履きふるした靴なんて、いっ たいだれが買うのでしょうね。

それでも掘り出し物はたまにはあるようです。売り主がその価値に全然気がつい ていない、アンティークやコレクターズ・アイテムなど。5月15日から始まるテ レビシリーズ、"Boot Sale Challenge" はそのへんを主眼にした番組です。二つの チームが100ポンドと1時間のタイムリミットを与えられ、boot sale を歩き回 ります。そして、最後に専門家が両チームの買ったものの価値を鑑定します。第一 回目のロケが、ケント北部で行われ、その結果が地元の新聞に載っていました。ブ ルー・チームの鑑定された価値の合計が130ポンド、もう一方のチームの合計が 140ポンドだったそうです。アンティーク番組が大流行りの昨今、一般の人にも 価値がわかるようになり、それほど大きな掘り出し物というのはもうめったにない のでしょうね。

     ● 日本人とイギリス人のマニアック度くらべ

今回のテーマについて、わたしが常連だった頃から、最近の日本の献血事情はど の程度変わっているのかを知るために、関連サイトを調べてみました。まあ、ある はあるは・・・。マニアックな人が日本にはたくさんいるのですねえ。献血日記、 献血リンク集なんていうのもあるみたいです。献血回数を競う献血ランキングから、 おすすめ献血所紹介まであります。こうやって最近の献血者はネットワーク作りま でしているのですね。みなさん、ネットの世界を楽しんでいるようです。

それに比較してイギリスのサイトのほうは、上記の "National Blood Service" の公式サイトくらいで、ちょっとさびしいものがありました。献血に対するイギリ ス人の関心が低いこともあると思いますが、どうしてイギリス人は献血に情熱を燃 やさずにいられるのでしょう?もっとも、イギリスでは日本ほど、個人のホーム ページ作りが盛んでないようにも思われますが。

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