Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第15回の目次

● 5月の行事
● イギリスのバーベキュー
● バーベキュー・パーティーの心得
● 一言イギリス英語講座 - "bootlegger"
● 物騒になってきたロンドン

     ● 5月の行事

このコーナーはその月に入る前にご紹介していきたかったのですが、あっと言う 間に5月に突入してしまいました。さて、遅れ馳せながら、その5月の行事は・・。

May Day Bank Holiday(今年は5月3日) Spring Bank Holiday (今年は5月31日)

このバンク・ホリデーの名称はスコットランドでは逆になります。(スコットラ ンドでは5月3日が "Spring Bank Holiday"。)5月の第一月曜日はメイデーを記 念したもの。最終月曜日のほうは、聖霊降臨祭( Whit Sunday, Whitsun, Pentecost などと呼ばれます。)に由来するものだということです。聖霊降臨祭は キリスト教の祝日で、復活祭のあとの第7日曜日を指します。復活祭同様、この聖 霊降臨祭もまた、毎年日にちが変わります。(復活祭の日にちが月の満ち欠けに よって決定されるためです。)今年の聖霊降臨祭は5月23日です。Bank Holiday のほうは毎年5月の最終月曜日に定まっています。メイデーですが、もともとは5 月1日を指し、今では International Labour Day または International Workers' Day 、つまり労働者の祭典のほうで有名です。しかし、May Day といえば、もとも とは春の訪れを歓迎する古いお祭りを表しました。その起源は古代ローマの春と花 の女神フローラをたたえたお祭りにあり、始まりは紀元前258年まで溯るといわ れます。これが、中世になると、イギリスでは歌を歌ったり踊りを踊ったりの賑や かで楽しいお祭りになったということです。この時期の行事で有名なのは、Maypole Dance や 5月の女王( Queen of the May あるいは the May Queen )を選ぶ村の 美人コンテスト(これが現在のミス・ワールドの原形という説もありますが。) や Morris Dance でしょう。メイポール・ダンスは、メイポールと呼ばれる棒の周 りを踊りを踊りつつ、メイポールに結びつけらたリボン(4の倍数の本数で、メイ ポールの高さの1.5倍の長さ)でいろいろな模様を織り成していくものです。踊 り手は内側の円と外側の円とに分かれ、シンプルな縞模様から内側のリボンと外側 のリボンが交差する複雑な模様まで、さまざまな模様を踊りながら表現していきま す。残念ながら、わたしはまだ実際に見たことはありませんが、今でも田舎の村の 広場などでは行われているようです。Morris Dance はこの時期に限定したもので はありませんが、May Day は最もよく見られる機会の一つです。これは一種の フォークダンスのようなもので、通常6人あるいは8人の男性によって踊られます。 最近では、女性の踊り手も出現しているそうです。各地方によって、ハンカチを 振ったり、棒や木刀のようなものを打ち鳴らしたり、いろいろ変化があるようです。 また踊り手にも「王」「女王」「魔女」などの役ということです。残念ながら、こ れもまだ実際に見る機会に恵まれていません。しかし、地元の図書館の掲示板で、 「求む!モリスダンサー」という貼り紙を見たことがありますので、この伝統が今 でも生き続けているのは確かでしょう。このような行事を含め、5月の初めの連休 にはイギリス各地で、May Fair が開かれます。最近では、May Day というと労働 者の日という印象のほうが世界的には強いですが、こちらは1886年5月1日に 1日8時間労働を求めてアメリカ及びカナダで起こった全国規模のストライキを記 念して、1989年にこの日が労働者の休日と定められたことに基づきます。イギ リスでこの日が休日になったのは、労働運動華やかなりし頃の1970年代くらい のようですが、その後、サッチャー政権時代を経て労働組合はすっかり勢力を削が れ、今では5月1日といっても、労働者の行進などは見られなくなりました。

FA Cup Final(今年は5月22日)

サッカーシーズンの最後を飾るフットボール協会杯争奪トーナメントの決勝戦が ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われます。この日は、アメリカで言った ら、スーパーボールの決勝戦、日本だったら野球の日本シリーズと言ったところで しょうか?試合が始まると、道路には人っ子一人いなくなります。今年の決勝戦は、 マンチェスター・ユナイテッドとニューカッスルとの間で争われます。

Chelsea Flower Show (今年は5月25日〜5月28日)

The Royal Horticultural Society 主催の花の祭典。チェルシーの王立病院の庭 に設置された巨大なテントの下で開かれます。一般公開は27日と28日のみで、 それ以外は王立園芸協会会員しか入場できません。プロの園芸家(種苗園経営者や 造園師など)からアマチュア(学校など)までが、この日のために丹精こめて育て てきた植物や念入りに設計した庭を披露します。このショーは1913年からチェ ルシーで開催されおり、それ以降、戦中・戦後の何年かを除いてほぼ毎年この時期 に行われています。ガーデニング好きな人たちにとって、このショーは1年のメイ ンイベントと言えるでしょう。毎年約17万人の人出が予想されます。下記の王立 園芸協会のHPでは、昨年のチェルシー・フラワー・ショーの受賞庭園の写真など も見られます。 http://www.rhs.org.uk/around/shows/Chel.asp

     ● イギリスのバーベキュー

5月初めの三連休は信じられないくらいすばらしい天気に恵まれました。こんな 初夏の陽気の日には、必ず、どこかからバーベキューのいい匂いが漂ってきます。 (というわたしは肉食動物です。菜食主義者の人に言わせると、肉を焼く匂いは耐 え難いほど気持ちが悪いのだそうです。と、タウン紙に投書がありました。その書 き方はまるで肉を食べる人間は野蛮人だと言わんばかりでしたが、干し椎茸をもど す時のあの強烈なガス臭さは、肉を焼く匂い以上に暴力的だとわたしは思いま す。)バーベキューはいまやイギリスの夏の風物詩ですが、これがイギリス土着の 習慣とはわたしには思えません。なぜってこれほどイギリスの風土に不向きなもの はないからです。これまでに、家の主(バーベキューは一般的に男の仕事と考えら れています)が一人淋しく傘をさしながら、バーベキューのお守りをし、ゲストは 楽しく家の中で歓談するといったバーベキュー・パーティーを何度も経験したこと があります。店の外にテーブルと椅子を出すカフェやワイン・バーも流行ってきま した。これは、ヨーロッパの暖かい国(フランス、イタリア、スペインなど)へ休 暇で出かけた人々が持ち帰ってきた、屋外で食事をする習慣の一部と思われます。 あるワインバーでは、外にテーブルと椅子の他に、巨大な灯篭型ストーブが置かれ ています。わたしはそれを見る度に、うーん、何もそこまでして外で食べなくても いいんじゃないか?と思うのですが。

というわけで、最近「食」関係の話題を取り上げていなかったこともあり、今回 はバーベキューについて書いてみようと思います。

まずは、器具から。炭 (charcoal) を使うものがやっぱり主流でしょう。アルミ の箱に魚焼きのような網がのっていて、中に炭の入った使い捨てタイプから、煉瓦 造りに網を渡した本格的なものもあります。フランスやスペインに行くと煙突状の ものがついた大きなものもありますが、イギリスではこのタイプはほとんど見ま せん。ヒバチタイプ(ヒバチはもう英語です。)も出回ってきました。しかし、わ たしは蓋のついたタイプのほうが、スモーキーな風味が食品にしみ込んでおいしい と思います。それに、このタイプなら蒸し焼き効果があるので、鶏のドラムス ティックなど中までじっくり火が通らないといけないものを調理する時に便利です。 しかし、なんといってもわたしがお勧めしたいのはガス・バーベキューです。炭を 使うと、火をつけてから調理ができる温度に上がるまでに40分くらいかかります が、ガスなら5分くらいです。ガスといっても直火ではなく、ガスの火の上に、セ ラミックや溶岩の小さな塊などの炭の代用品を置き、その上に網が来るので、ス モーキーな風味は変わりません。網からしたたり落ちる肉汁が炭の上に落ちてこの ような風味が出るからです。火加減の調整も自由自在です。炭を使わないので、後 始末も簡単。(セラミックや溶岩は繰り返し使えます。)ガスなら手軽にバーベ キューが楽しめます。

さて、それでは、食べもののほうに入ります。やっぱりバーベキューの主役は肉 でしょう。イギリスでもいい牛肉は高いので、これはパーティーにはめったに出て きません。人気はソーセージ(もちろんイギリス風の)、鶏肉のドラムスティック や手羽先、ラムチョップ、豚のスペア・リブ、ハンバーガーなどです。(ちなみに、 日本ではハンバーガーの中に入っている肉の塊をハンバーグと呼びますが、イギリ スでは、バン付き同様、これもまたハンバーガー又はバーガーと呼びます。)肉は 予めマリネードしておくか、焼く前にソースをはけで塗ります。日本のようにエバ ラ焼き肉のたれを焼いた肉につけながら食べるということはありません。ソースに は実にいろいろなものがあります。(不精なわたしのことですから、ここで取り上 げているのは、もちろんスーパーで手に入るソースのことです。)正統派は、その 名もバーベキューソースというトマトベースのものですが、この他にもにんにくの きいたいわゆる中華風、ラムにはミントソース(これはローストラムに添えるもの とはまた違います。)、ポルトガル風・インド風・タイ風など実に多様です。野菜 はあまり見かけませんが、たまに趣向をこらしてマッシュルーム(これは柄のつい た長方形の金属かごのような専用器具に入れるか、串刺しにしてバーベキューにの せます。)や赤ピーマンなどを焼くこともあります。しかしながら、野菜は主に バーベキューの付け合わせ用サラダとしていただきます。最近は、鮭や(地中海風 に)いわしなどの魚介類もバーベキュー・パーティーに登場します。これらは技術 的にかなりの上級者コースです。鮭はホイルに包んでバーベキューの網にのせます が、形がくずれてしまうことが多いので、なかなか難しいのです。(いわしはホイ ルには包まずに、アルミの皿などにのせて焼くのがよいようです。)パーティーで 披露するのは、練習をしてからにしましょう。

     ● バーベキュー・パーティーの心得

バーベキュー・パーティーほどイギリスで企画するのが難しいものはありません。 バーベキューといえば、野外で行われるものですが、天気は予想ができません。ど れだけ念入りに天気予報を聞いていてもだめです。そこで、雨の場合に備えて十分 な計画を立てておきましょう。

イギリスのパブをご覧になればわかる通り、イギリスでは立ち飲みです。しかし、 食べるということになるとやっぱりイギリス人も座りたいもの。そこで、招待した 人数分椅子があるかどうか、なければ地面にでも座れるように工夫するなど、座席 については注意深く準備しましょう。さもないと全員参加の椅子取りゲームという ような悲惨なパーティーになります。(顔は笑っていますが、結構壮絶です。)

わたしはまだこのてのパーティーに行ったことはありませんが、ゲストが自分の 食べる分の肉を持参するバーベキュー・パーティーというのもあるようです。飲み 物のほうは、ゲストがビールやワインを持ってきてくれるので、それほど大量に用 意する必要はありません。(逆にゲストのほうはこれを期待されていますので、忘 れずに。)そして、イギリス人はみな甘いもの好きです。デザートは忘れずに用意 しましょう。

バーベキュー・パーティーは主婦にとってはとても楽です。前述したように、バー ベキューをするのは通常男性の役割とみなされます。また、付け合わせもサラダな ど前もって作っておけるものばかりです。(夏のものなので、温かい料理は通常出 さない。)そういうわけで、主婦のみなさん、この時はワインでも飲みながらゆっ くりしましょう。

それではみなさん、バーベキューをお楽しみ下さい。

     ● 一言イギリス英語講座 - "bootlegger"

アルコール(やカセットなどの音楽記録媒体)の密輸人・密造人・密売人を表し ます。語源は19世紀にさかのぼり、かつて密輸人たちがブーツの中にボトルを隠 したことに由来します。現在のイギリスでは、フランスから安いアルコールやタバ コを仕入れてイギリスに持ち帰る人たち(そしてそれを売る人たち)という意味で よく耳にします。イギリスのビールにかかる税金は、実にフランスの7倍にものぼ ります。付加価値税 (VAT) を含む3種類の税金の合計は、ビール全体の価格の45 %を占めるそうです。このような理由から、日帰りでフランスに行って、お酒やタ バコを仕入れてくる人は後を絶ちません。わたしもおととしは日帰りフランス旅行 を3回くらいしました。フェリー運賃が実に安いのです。平日の日帰りだと車プラ ス乗員2名で10ポンド(約2000円)でした。我が家は特にアルコール消費量 が多いわけではないのですが、フランスのチーズ、パテ、ケーキ(特にフルーツタ ルト)などの食料品は日帰り旅行をするに十分値するほどの絶品です。ちなみに、 ケント州ドーバーとフランスのカレー間はフェリーで1時間45分。フランスに近 いケント州では、消費されるビールのうち4分の1がフランスから来たビールだそ うです。

こうしてヨーロッパ大陸から仕入れてきたアルコールやタバコも、制限量の範囲内 で個人で消費する分には違法ではありません。最近、問題になっているのは、これ をイギリス国内で売る人たちです。本来なら、国庫に入るべき税金が入ってこなく なるわけですから。もっと深刻な影響を受けているのがパブ経営者や酒屋(とくに ケント州の)で、これらの団体では、アルコールにかかる税金を削減するよう大蔵 省にに訴えています。

     ● 物騒になってきたロンドン

このところ、イギリス発のニュースが日本のメディアを賑わせているようです。 ロンドンでは極右団体による爆弾事件が3週連続して週末の繁華街でおきています。 そして、その間にはBBCの人気司会者ジル・ダンドーの殺人事件もおきました。 この事件では日本でもたいへん大きな扱いかたをされたようで、ジル・ダンドーっ てそんなに有名な人だったの?というご質問を受けます。もし、日本に、NHKの アナウンサー出身で、今はバラエティー番組の司会者としてお茶の間の人気を得て いる清潔感あふれる女性がいたら、その人を日本版ジル・ダンドーと考えて間違い ありません。誰も悪く言う人がいないこと、同僚のBBCニュースキャスターも心 からその死を悲しんでいるところを見るととてもいい人だったのでしょう。犯人の ほうはいまだに捕まっていません。犯人については、ストーカー説、NATO軍に よるテレビ局爆撃の報復を企んだセルビア人という説、同じくBBCにつながりの ある女性が数年前にやはり謎の殺し屋によって殺された事件との共通点を指摘する 説など、いろいろとりざたされています。一方、爆弾事件のほうは容疑者がすでに 逮捕されています。が、団体による犯行だけに、犯行の続行が心配されます。また 週末がやってきますが、このようなテロ行為に怯えながら暮らすというのも腹が立 つものです。

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