**イギリスつまみ食い**
|
● 8月の行事 |
● "port" の話 |
● 一言イギリス英語講座 - "over the moon" |
● 世紀末の世の中 |
● 伝統的な英国紳士の飲み物 - "port" の話 今回は第18回のコーニッシュ・パイに続き、食のうんちく第2弾。このシ リーズでは、味よりはその背後にあるイギリス文化についてご紹介していきます。 今回は、わたしの大好きなお酒、ポートの巻。 ポートは、早い話がブランデーを加えてアルコール度を高くしたワイン。ですか ら、通常小さめのグラスでいただきます。(別に、がぶがぶ飲んではいけないとい う規則はありませんが。)ブランデーを加えることによって、葡萄の実の醗酵を止 めます。その結果、イーストによって葡萄の糖分が奪われるのを防ぐため、甘みが 残り、アルコール度も高くなるわけです。味としては、ちょっと甘めだけど、なん ともいえない苦みの混じった豊潤なワインと言った感じでしょうか。 ポートは、ポルトガルで作られるイギリス人のための飲み物です。厳密には、ポ ルトガルのドゥーロ地方(特に有名なのが、オポルトと呼ばれる市)で作られたも のを指します。ポルトガルからイギリスへのワインの輸入は1353年に始まりま したが、今のポートができあがったのは、1678年のことです。イギリス人の口 にあうワインを求めてポルトガルにやってきたリバプールのワイン商人の二人の息 子が修道院を訪れます。そこですすめられたのが、ちょっと甘めの赤ワイン。早速、 二人は買えるだけのワインを買いつけました。そこで、(甘いものに目がない)修 道院長が明かしたこのワインの秘密は、地元で作られたブランデーをほんのちょっ ぴり加えたということ。兄弟が、この時、輸送に耐えるようにさらに少量のブラン デーを加えました。こうして、今日のポートができあがったわけです。この後、イ ギリス・ポルトガル間で結ばれた好意的な関税条約におかげで、18世紀、ポート の人気は飛躍的に高まります。 ポートには大きくわけて、ヴィンテージと (Vintage) とウッド (Wood) という 2つの種類があり、ウッドにはさらに Ruby, Tawny, White の3種類があります。 ヴィンテージ・ポートは、ある特定の年に(10年に2、3回あるかないかだそう です。)特定のぶどう園で取れた葡萄を2年ねかせて作られます。このように厳選 された葡萄のわずか10%だけがヴィンテージ・ポートになり、残りはウッド・ ポートになります。ヴィンテージ・ポートはねかせればねかせるほど味がよくなる と言われ、子供が誕生した時にヴィンテージ・ポートを買い、その子が21歳の誕 生日を迎えた時に飲むというような楽しみ方をする人もあるようです。ウッド・ ポートのうち、ルビー・ポートは、暗赤色をしやや甘口。木の樽に入れて数年ねか したもの。トーニ・ポートはルビー・ポートをさらにねかしたもので、(20年く らい)ルビーほど甘くなく、スムーズな味わいだそうです。ホワイト・ポートはオ ポルト地域の白葡萄から作られた甘い白ワイン。赤色をした他のタイプのポート同 様の製造工程をたどりますが、他のポートが食後に飲まれるのに対して、ホワイト・ ポートは食前酒として飲まれるそうです。(わたしはトーニとホワイトは試したこ とがありません。) ポートは昔から紳士の飲み物としてたしなまれてきました。よく、イギリスの時 代物映画などで、貴族たちがお食事をした後に、ご婦人方は別の部屋に下がり、殿 方だけが、葉巻を吸うために食堂に残るシーンがあるでしょう?そこで紳士たちが テーブルで手から手へ回しながら楽しむのが、ポートです。つねに時計回りに回さ れます。 そういうわけで、今回はとてもイギリス的な飲み物、ポートについてでした。 |