Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第26回の目次
● 10月の行事
● 音の話あれこれ
● 一言イギリス英語講座 - "rain cats and dogs"
● アマチュアリズムの終焉

     ● 10月の行事
     
       次のミレニウムまであと90日足らずです。今年も残りわずかですねえ。店頭
     には、クリスマス・カードやクリスマス・クラッカーが並び始めました。日暮れ
     が早まり、寒くなってくると、思いはクリスマスに向かいます。

     Rugby World Cup (10月1日〜11月6日)

       第4回ラグビー・ワールド・カップがカーディフの新しいスタジアムで10月
     1日に開会されました。チャールズ皇太子 (Prince of Wales) による開会宣言、
     シャーリー・バッシーによるウェールズ国歌斉唱とウェールズ色の濃い開会式と     
     なりましたが、会場は、ウェールズの他、イングランド、スコットランド、アイ
     ルランド、フランスにまたがります。5グループに分かれた合計20チームが
     11月6日の決勝戦を目指して競い合います。日本は、アルゼンチン、ウェール
     ズ、サモアを含む予選プールD組、イングランドはB組です。決勝戦の有力候補
     は、南アフリカとニュージーランドと言われています。

       ラグビー・ワールド・カップの公式サイトは、

     http://www.rwc99.com/

       日本チーム(日本ラグビーフットボール協会)の公式サイトは

     http://www.rugby-japan.or.jp/

     です。

     Hallowe'en(10月31日)

       カトリックの祭日、万聖節 (All Saints' Day) の前夜。All Hallows Eve が
     語源です。"Trick or Treat" は、もう日本でもすっかりおなじみになったでしょ
     う。ハロウィーンの風習は、キリスト教以前の、ヨーロッパの土着の宗教で、ケ
     ルト民族に信じられていたドルイド教の習慣に基づくといわれます。11月1日
     は、ケルト族の農業暦で新年の始まりにあたり、 "Samain" (または "Samhain")
     のお祭りが行われました。この祝日には、自然の法則が止まり、幽霊や悪魔が跋
     扈すると信じられていました。また、長い冬から目覚めた時に、地上に新しい生
     命が再び宿ることを確実にするために、大きな火が焚かれました。別の説による
     と、この "Samhain" は魔王であり、11月1日に、その前の年(前日10月31
     日に終わった年)に亡くなった人々の魂を動物に宿らせると信じられていました。
     そこで、遺族の人たちは、自分たちの愛する人々の魂が、翌一年間、少しでも高
     級な動物に宿れるようにと、魔王に、食べ物などの供物や祈りを捧げました。
     (袖の下っていうところでしょうか。)これが、"Trick or Treat" の習慣になっ
     たといいます。
     
       スコットランド人やアイルランド人などのケルト系の人々の間に伝わっていた
     習慣が、アメリカで盛んになり、現在のような仮装パーティーや "Trick or
     Treat"、"Jack-O-Lantern" といった形になったそうです。イギリスではハロ
     ウィーンは、比較的新しい行事で、上記のような意味では、アメリカから逆輸入
     されたと言っていいでしょう。こういう子供が得をする習慣は、根づくのに時間
     がかかりません。ちなみに、アメリカでは「トリック」は、一般的に、家の窓ガ
     ラスに石鹸をこすりつけることらしいですが、イギリスで「トリック」が実行さ
     れているのは見たことがありません。1年前に書いた関連コラムが、
     「Anglo-bites 番外編」にありますので、興味のある方はぜひご覧ください。
     
     Summer time ends (10月31日)

       この日の朝2時に時計が1時間逆戻りし、グリニッジ標準時に戻ります。とい
     うわけで、サマータイムの終わり。一気に夕暮れが早くなります。いよいよ本格
     的な冬の到来ですね。一時間長く眠れるのはうれしいですが、起きたら、家中の
     時計を調整しなければ。日本との時差は今までの8時間から9時間になります。     
     
          
     

     ●音についての話あれこれ

       先日、山口県に住んでいる友人が、町議会選挙が近いため、選挙カーがうるさ     
     くてかなわん、とぼやいておりました。

       そこからすると、イギリスというのは静かな国です。パトカーや救急車、消防
     車も、必要以外の時にはサイレンを鳴らしません。道路が混んでいて、どうして
     も他の車にどいてもらわないと動けない時、「エクスキューズ・ミー」といった
     感じでサイレンを鳴らしたり、交差点や横断歩道で周りの車や歩行者に注意を促
     す時にサイレンを鳴らすくらいです。日本の救急車なんて、夜中の2時、車の通
     りはほとんどない時でも、サイレンを鳴らします。そして、「ここで病人が出た
     のだ。」といわんばかりに、救急車を呼んだ家の前でぴたっとサイレンを止めま
     す。これなんて、サイレンの本当の意味はなんだろうな、と疑問を抱かせます。
     もっとも、これは日本だけではないかもしれません。昔、アメリカに住んでいる
     友人が、消防署の前に住んでいるので、よく真夜中にサイレンでおこされる、と
     言っていました。

       久々に日本に帰ると、その騒音の多いことに驚きます。町中に音があふれかえっ
     ています。日本人の騒音に対する許容度ってすごく高いのでしょうね。それとも
     やっぱり慣れでしょうか。聞きたくない音を聞かされるのも暴力の一つではない
     かと思うのですが。

       しばらく前にテレビ番組(ドキュソープ)にもなりましたが、ロンドンのウェ
     ストミンスター区の環境衛生課には、騒音対策特別チームがあります。真夜中ま
     で大きな音で音楽を流しているという通報があると、その家に出かけて行って警
     告をします。24時間体制で騒音対策にあたっているわけです。防犯アラームが
     鳴りっぱなしの車を牽引車で撤去するシーンなどには、思わず拍手をおくっちゃ
     いたくなりました。

       秋の音といえば、虫の音(ね)ですよね。日本では、虫の声、とか虫の音(ね)
     というように、虫の鳴き声は音楽的なものととられていますが、イギリスでは単
     なる "noise" (雑音)です。それも、聞き取れればの話です。多くの人は、虫
     の音には無関心なので、虫の音を虫の音と認識することすらないようです。やっ
     ぱり、これも感性と文化の違いでしょう。イギリスでも、鳥のさえずりは
      "song" と音楽的なものとされているのに、昆虫には冷たいようです。

       夏の音は、日本ではセミでしょう。イギリスにはセミはいません。南のケント
     にいないのですから、イギリスにはいないと言い切ってもいいでしょう。だから、
     イギリス人のパッケージツアーでイタリアなどに行くと、「あのうるさい音は
     何?」ということで大騒ぎになります。セミだ、と言うと、そもそもセミとはど
     んな昆虫か、ということから始めないといけないことになります。ちなみに、セ
     ミは英語で、cicada と言いますが、発音はシケイダとかシカーダとかまちまち
     です。現物が存在しないのですから、それも無理ないかもしれません。

       日本人の友人がイギリス人の御主人とニューヨークに行きました。セミの声が
     するので、「あら、セミだわ。」と言いましたが、御主人は、あれは自動車のア
     ラームの音だと言い張って聞きません。"Seeing is believing" とは言いますが、
     やっぱり見たこともないものを信じるのは無理?



     ● 一言イギリス英語講座 - "rain cats and dogs"

       雨が土砂降りに降る。英語の教科書などでも見かける、わりとなじみのある表
     現ではないでしょうか。"There is no room to swing a cat" 同様、これも文字
     通りを想像するとなかなかすごい慣用句です。
     
       この慣用句は、1738年までに知られていたようですから、かなり古い熟語
     ということになります。1652年には、すでに "Raining dogs and polecats".
     という表現もあったそうです。
     
       語源については、有力な説が二つありますが、どちらもいまいち説得力に欠け     
     ます。
     
       一つは、当時は排水システムがお粗末だったために、大雨が降ると、猫や犬が
     溺れ死んだ、そこで、大雨の翌日には通りのあちこちに猫や犬の死体がごろごろ
     ころがっており、人々は天から犬や猫が降ってきたと思った、というものです。
     
       もう一つは、北方神話によると猫は天気に対してたいへんな影響力を持ってお
     り、また犬は風の前兆と考えられていた、そこで、猫は大雨を、犬はそれに伴う
     強風を象徴するようになった、という説です。
     
       ね、どっちもいまいちでしょう?どちらかというと、前者のほうがビジュアル
     な意味で説得力がありそうな・・・。
              


     ● アマチュアリズムの終焉
     
       ラグビーのワールドカップが始まりました。まだ、日本チームの試合はまだ実     
     際に見たことがないのですが、本当にこれって日本人のチーム?というメンバー
     構成のようです。

       わたしが熱狂的ラグビーファンだった10数年前には、ラグビーはアマチュア
     スポーツの最後の砦みたいに言われていました。ところが、ラグビーの本家本元、
     イギリスに来てみると、しっかりプロのラグビーチームというのがあるではない
     ですか。アマチュアのラグビー・ユニオンから分かれてできたラグビー・リーグ
     です。人数構成は13人、ルールも変えて、見せるラグビーを意識して、かなり
     商業的な色彩が強くなっています。(ワールドカップに出場しているのは、ラグ
     ビー・ユニオンのほうの選手たちで、本職はお肉屋さんだったり、空軍のパイロッ
     トだったりして、なんか微笑ましいです。)

       また、10数年前には、ラグビーは紳士のスポーツ。観客も、声を上げたり、
     鳴り物を鳴らしたりしない。拍手だけで、プレイに対する自分の評価を表現する
     ものだ、と言われていました。わたしも、それに感心して、いいプレイには一生
     懸命、拍手をしたものです。ところが、今回のワールドカップを見ると、声援は
     もちろん、笛・太鼓もありです。おまけに、オーストラリア・ルーマニア戦では、
     ストリーキングまで出ました。(オーストラリア人のようです。)紳士のスポー
     ツはどこへ行ったのでしょう?
     


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