Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第28回の目次
● 食べてはいけない
● イギリスの食べ物は危険か?
● 一言イギリス英語講座 - "The Sweeney"
● ミレニアム泥棒

● 食べてはいけない - イギリスの"food scares"

ここへ来て、フランスの頑固な抵抗にあっているものの、イギリス産牛肉のEU圏内への輸出も解禁となりました。狂牛病騒ぎも過去のものとなりつつあります。わたしがイギリスに来てから、このような食品の安全性についての騒ぎがあったのは、狂牛病が始めてではありません。

1980年代、わたしがまだイギリスに来る前には、卵のサルモネラ騒動というのがありました。それから十年以上が経つわけですが、いまだに料理の本などを読むと、「この料理は卵をよく加熱しないで使いますので、お年寄り、子ども、妊娠中の方は注意しましょう。」という注意書きがついていることがあります。もっとも、養鶏場の衛生状況はかなり改善されているため、半熟卵の危険性はかなり低いようです。それでも、生で食べるほどの勇気はわたしにはありません。

1990年代の初めだったと思いますが、食品包装フィルム騒ぎというのもありましたねえ。日本でいう、サランラップとかクレラップとかの類です。脂肪分の高い食物(肉、チーズなど)を食品ラップで包むと、食品ラップから化学物質が食物に溶け出して、発ガン物質を形成する、というものです。最近、塩化ビニールを使用しない食品ラップが発売され、やっと脂肪分の高い食品にも使用できるようになりました。(それでも、やっぱりイギリスの食品ラップはお粗末です。もし、これを日本のラップメーカーの方が読んでいらっしゃいましたら、ぜひイギリス進出を真剣に考えて下さい。イギリスの消費者のために。)

その後には、ニンジンの農薬騒ぎというのがありました。ニンジンによく使われている殺虫剤の危険性が政府の諮問機関によって報告されました。そこで、政府から、ニンジンは頭としっぽを十分に切り落として、必ず皮をむいて食べること、という警告が出されました。

そして、現在はGM(遺伝子組み替え)食品騒ぎ。これに対しては、現在のところ、スーパーなどの自主規制しかありません。最初はどちらかというと肯定的だった政府の態度も、世論の趨勢に従い、だんだんに否定的になってきたような感じです。

● イギリスの食べ物は危険か?

それでは、イギリスという国は、本当に、食べ物が危険な国なのでしょうか?

イギリスには常に食品の安全性について調査研究している機関があります。政府の諮問機関もあります。これらの団体からの報告を受けて、政府が禁止するなり、正式な警告を出すなりします。この間の行動の速さには、感心させられます。イギリスは食べ物の危険な国というよりは、食べ物の安全性に関する調査が常に行われ、情報が公開され、そして政府がそれに対してすばやい行動をとる国と言ったほうがいいのかもしれません。

しかし、一点だけ、政府の措置に同意できない点があります。それは骨付き牛肉の禁止です。狂牛病騒ぎの間にも、牛肉全般の販売が禁止されるということは一度もありませんでした。ところが、骨付き牛肉については、英国産の牛肉の安全性が確立された今も、禁止されています。禁止の理由は、骨に含まれる成分が、加熱されると、肉の部分に染み出し、狂牛病(厳密にはその人間版のクロイツフェルト・ヤコブ病ということですが)を引き起こすためと言われています。(この成分は、うまみ成分と呼ばれるのではないでしょうか?)禁止というのはどういうことかというと、ある肉屋またはレストランが骨付き牛肉を売っているという通報を受けると、地方自治体の担当者が店に行って確認し、肉屋もしくはレストラン経営者を告訴し、罰金を徴収するということです。しかし、骨付き牛肉から狂牛病に感染する確率は、喫煙者が肺ガンにかかる確率よりも低いものです。果たして、政府が禁止するほどの危険があるのでしょうか?国民の安全を最優先し、果断を下した政府を称える人も中にはいますが、わたしは、即刻禁を解き、食べるか食べないかは個人の判断に委ねるべきだと思います。ちょうどたばこと同じように。

では、この骨付き牛肉は現在イギリスでは手に入らないのかというと、そういうわけでもありません。以前、知人の家に夕食に招かれたときに、骨付き牛肉をいただきました。骨付き肉を売っているとクチコミで伝わっている肉屋から手に入れたということです。「ここがおいしいのよねえ。」と言いながら、骨髄に舌づつみを打つイギリス人たちを見ながら、禁酒時代のアメリカで 密造酒をこっそりすする喜びとはこういうものだったのだろうかとわたしは想像するのでした。

(まさか、このコラムをトニー・ブレアが読んでいたとは思えないのですが、これをアップした後、骨付き牛肉の解禁が決定しました。クリスマス前には店頭に並ぶことになるでしょう。)

● 一言イギリス英語講座 - "The Sweeney"

1970年代にヒットした刑事ドラマのタイトルでもあります。意味は、特別機動捜査隊。(日本にもそんな名前の刑事ものがありましたね。)これも、前回ご紹介したコックニー・ライミング・スラングの一つです。特別機動捜査隊は、英語で "Flying Squad"。そのスラングが、"Sweeney Todd"。これもご多分にもれず、韻を踏んでいるほうの語が省略されます。

"Sweeny Todd" は、昔、ロンドンのフリートストリート (Fleet Street) で床屋を営んでいた男の名前です。なんとこれがとんでもない床屋だったのでした。そこには文字通り落とし穴が、客を待っていたのです。客が椅子にかけると、床がぱたりと落ち、椅子ごと真下に回転して、客はまっ逆さまに、地下室へ。そこでは、共犯のロヴェット夫人があわれな客をミートパイにしていました。この悪事が発覚したのは、ミートパイを買った客がその中に爪が入っているのを発見したためです。

現在、15人の患者を殺した罪で、医者が裁判にかかっています。イギリス犯罪史上最大の連続殺人犯かと言われていますが、実は、こんな大量殺人者がすでにイギリスにはいたのですね。

● ミレニアム泥棒

先日、ジュネーブの知人から電話があって、泥棒に入られたとのこと。ジュネーブでは、最近、空き巣が大流行りなのだそうです。2000年問題を心配して、人々が自宅に多額の現金を置いているのを狙って、空き巣に入るのだそうです。銀行のコンピュータが誤動作し、口座がなくなってしまったり、お金がおろせなくなったり、残高が間違ってしまったりするのを心配しているのでしょうね。 それにしても、2000年問題がこんなところにまで及んでいるとは・・・。


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