Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第30回の目次
● ミレニアムの賑わい
● 日本の常識は世界の常識ではない(2)
● 一言イギリス英語講座 - "item"
● 今年の「新年の抱負」傾向

● ミレニアウムの賑わい

今年はミレニアムということで、大晦日はロンドンもたいへんな人出だったようです。(ニュースによると250万人が繰り出したとか。)特に、花火大会の行われたテムズ川河畔は立錐の余地もないほどの混みようだったそうです。それでも、行った人たちは、口をそろえて、行った甲斐があったと感激していました。もう二度と行かないけどね、と付け加えつつ・・・。安心して、誰も次のミレニアムまで生きていませんって。でも、実は来年が本当の21世紀入りの年とイギリス人たちが気がついたら、また今年の大晦日もお祭り騒ぎになるかもしれませんね。

ちなみにわたしは、自宅で新年を迎えました。なにせ陸の孤島ビーン村ですので、ロンドンに出るのは一苦労。とりわけ、大晦日はロンドン全体で交通規制が行われましたし。でも、丘の上の我が家の窓からは、各地であがる花火が一望できました。わがビーン村でも、個人のお宅とは思えないほど、なかなか立派な花火がたくさんあがっていましたよ。


● 日本の常識は世界の常識ではない(2)

このシリーズでは、「これがイギリスでは常識ではないなんて・・。」というちょっとした文化的相違を軽く扱っていくものです。第21回では、「5W1Hは報道の鉄則」と「男は辛党」という日本の常識はイギリスでは通用しないというお話をしました。今回はまた異なった二つの話題を取り上げてみます。

◆選択肢の選び方

これは、「日本の常識はイギリスでは常識ではない」というよりは、むしろ、「イギリスでイギリスの常識が通じないなんて!」という話です。

年が明けて初出勤をした1月4日、ふと気がつくと、床からうずたかく 積まれたファイリングの山のすぐ横に貼り紙がありました。掃除会社からのもので、「捨てるべきものかどうか確認して下さい。Yes?No」と書いてあります。「ごみじゃないのよー。」と思いつつ、「Yes」を横線で消して「No」をそのまま残しておきました。

翌日出勤して、しばらくは気がつかなかったのですが、なんとなく机の周りがすっきりしています。そこで、はたと、あのファイリングの山が消えていることに気がつきました。きっと掃除の人がごみだと思って捨ててしまったのでしょう。かなり念を入れて「Yes」を消しておいたのですが。最近の掃除の人はだいたい外国人で、英語もよくしゃべれない人が多いので、イギリスの常識が通じなかったのかもしれません。

日本では、このような場合、該当するほうを丸で囲み、そうでないほうを無印のままにしておきます。ところが、イギリスでは、該当するほうをそのままにして、該当しないほうを横線で消します。お掃除の人たちは、どこの国の出身かは知りませんが、きっと該当するほうに印をつける、日 本式の国から来たのでしょう。きっと、思い切り塗りつぶされた「Yes」を見て、確信を持ってこれはゴミだと判断したに違いありません。今回のような事故を防ぐために、選択肢の印の付け方について、国際統一基準を定める必要があるのではないかと、わたしは思います。

◆職場のパーティーの主催者

会社で送別会をするというと、日本では普通送る人たちが主催するものですが、イギリスではその逆です。会社を去る人が最後の日に「一杯ご馳走するので、どこそこのパブに来て下さい。」と同僚を招待することになります。なんでもこれは、会社を辞める人には退職金が出たため、それで(気が大きくなって)同僚に最後に一杯ご馳走したというのが起源のようです。通常、送別会はパブで行われ、やってきた人に会社を去る人がカウンターで飲み物を買ってあげます。もう少し大規模になると、パブやワインバーの片隅を借りきり、飲み物・食べ物がセットになったパッケージを予めお店に注文しておいたりします。そして、来てくれた人に自由に飲んだり食べたりしてもらうというわけ。一方、送るほうの人たちは、カード("Sorry you are leaving" なんて書かれたもの)を回して、餞別の言葉を書き込み、お金を集めてプレゼントを買います。そして、最後の日には、プレゼンテーションと称して、みんなの前でプレゼントとカードを会社を去る人に渡します。で、拍手とスピーチでおしまい。仕事が終わった後、前述の、会社を去る人主催のドリンクということになります。

パーティーといえば、誕生日ですが、これはかなりプライベートな性質もの。普通は家族や恋人と祝いますが、職場でないこともありません。ところが、誕生日を覚えてくれている、あるいは知っている同僚なんていう殊勝な人種はいませんから、祝ってほしい場合は自分から宣伝しないといけません。そこで、ケーキを買って会社に持っていって周りの人々に「今日はわたしの誕生日なのよ。」といいながら配ります。ここでも、当人がパーティーの主催者になるわけです。ちなみに、わたしの夫の職場では、自分の誕生日には、お菓子をたくさん買い込んで同僚に振る舞うそうです。かなり家庭的な職場の例といえましょう。

もう一つ、職場のパーティーといえば、クリスマスパーティー。わたしが東京で外資系の会社に勤めていた頃、ディズニーランド内のホテルで泊りがけのクリスマスパーティーというのがありました。このパーティーに先立ち、アンケートがあったのですが、その中に「配偶者同伴にするか否か」という質問がありました。独身者が多かったこともあって、この提案は日本人の間ではたいへんな不人気で、結局、同伴者無し、社員のみのパーティーとなりました。イギリスでは、プライベートなパーティーについては、パートナー同伴は暗黙の了解事ですが、職場のパーティーとなるとちょっと事情は異なります。わたしの見たり聞いたりした例からすると、週日の終業後のパーティーは本人のみ、週末のパーティーは配偶者同伴というのが多いようです。つまり、週日のパーティーは会社生活の延長と考えられ、週末のパーティーはプライベートの時間を会社が拝借する、ということになるのでしょう。そのような意味で、前述の東京ディズニーランドでの泊りがけのパーティーというのは、公私の境界線のはっきりしないものだったと言えます。金曜日終業後のパーティーという意味では、会社の延長だったわけですが、宿泊が伴うという意味では、社員のプライベートな生活の部分にも食い込むものだったわけです。会社の行事に泊りがけで夫あるいは妻だけが出かけるということに、戸惑った外国人社員の配偶者も少なくなかったかもしれません。


● 一言イギリス英語講座 - "item"

もちろん、品目などの意味もありますが、ここでご紹介するのは、自他とも認める、すでに確立した交際関係にあるカップルという意味です。"Roy and Hayley are an item." というような感じで、主語は複数の人間でも、アイテムという単語は単数で使います。

現労働党政権が1997年に政権をとってすぐのことだと記憶していますが、政治家をバッキンガム宮殿に招いて、女王がパーティーを開催しました。その時、内閣閣僚で、同性愛者であることが公に知られているクリス・スミスが男性のパートナーと一緒に招かれたのに対して、保守党党首のウィリアム・ヘイグは、当時の婚約者で現在の妻であるフィオン嬢を同伴することは許されませんでした。宿泊を伴う招待なので、結婚前の二人を含めるのは道徳的に問題があるというのが、王室側(それに労働党政府の思惑も含まれているか?)の見解だったようです。当然、国民からはこの判断に対して疑問の声が。王室関係者の弁明としては、クリス・スミスとそのパートナーは、「アイテム」 であるが、ウィリアム・ヘイグと婚約者はそうではないということでした。やっぱり、イギリス王室のモラルの基準は、わたしにはよくわかりません。


● 今年の「新年の抱負」傾向

新年となると、よくイギリス人の間で交わされる会話が、"Have you got any New Year's resolution?" (新年の誓いたてた?)この「新年の抱負」については去年もこのコーナーでとりあげましたが、今年の新年の抱負の人気ナンバーワンはなんといっても、禁煙でしょう。今年は、禁煙パッチなどの禁煙商品の宣伝がやたら目につきます。加えて、今年は、NHS(国民医療制度)の禁煙キャンペーンのコマーシャルの本数も多く、1月の最初の一週間はテレビをつけると禁煙だらけでした。次に人気のある新年の抱負は、"Keep fit". スポーツクラブの入会者が激増する時期です。さて、この新年の誓いもいつまで続くやら・・。


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