● クリスマスのイベント
Pantomimes (Pantos)
日本を始め、他の国で一般に知られているパントマイム(無言劇)とは違いま
す。パントの歴史は、17世紀、18世紀にまでさかのぼると言われますが、今日
の形に近い、歌や踊りを交えた滑稽な劇の形になったのは、やはりヴィクトリア時
代のことです。ここから、徐々に現在の形(おとぎ話に題材をとり、クリスマス近
辺になると演じられる)に発展していきました。
パントのお約束ごとは、1)主人公は若い女性で、2)道化役は女装をした(ど
派手な衣装をつけた)俳優によって演じられる。3)悪者役は、思い切り憎々しい。
4)観客参加を呼びかける。("Oh, no it doesn't!"とか "Oh, yes it does!" そ
して "He's behind you!" などは、最もよくあるフレーズ。観客皆で声をそろえて
舞台に向かって呼びかけます。)5)有名人(よくあるのは、soap の脇役やそれ
ほどメジャーでないタレント。隣町のパントにはポストマン・パットも登場しま
す。)がちょい役で出演し、古典的なお話に現代味を添える。
演題は、「ピーター・パン」や「長靴をはいた猫」などの古典的なものから現代
劇まで幅広いですが、今年のクリスマスのトップ5(もっとも頻繁に演じられる
劇)は下記の出し物だそうです。(1)アラジンと魔法のランプ (Aladdin)
(2)シンデレラ (Cinderella) (3)ジャックとまめの木 (Jack and the
Beanstalk) (4)ディック・ウィッティングトン (Dick Whittington) (5)白
雪姫 (Snow White and the Seven Dwarfs) (4)のディック・ウィティングトン
以外は、日本でもよく知られた話ですね。このディック・ウィティングトンという
のは、一部実在の人物に基づくおとぎ話で、ディック少年が、猫と一緒に、富と名
声を求めて船旅に乗り出し、今まで猫を見たこともないというねずみばかりの島に
行って富を築き、ロンドンに戻って市長となる、という成功物語だそうです。
パントではありませんが、クリスマスの出し物として有名なのは、バレエでは
「くりみ割り人形」 (The Nutcracker) です。年末といえば、日本ではベートーベ
ンの第九ですが、クリスマス近辺になると、イギリスではヘンデルのメサイアなど、
宗教音楽が頻繁に演奏されます。
Santa's Grotto
クリスマスの近くになると、あちこちのショッピングセンターや大きなデパート
の一角で、親子連れが列を作っているのがよくみかけらます。これは、Santa's
Grotto への入場を待つ人たちの列です。入り口で、入場料(1ポンドか1ポンド5
0ペンスくらい)を払って中に入ります。親は普通同伴しません。中はほら穴のよ
うになっていて、その奥で、サンタクロースのおじいさんが、"Ho, ho, ho" と笑っ
て呼びかけます。子供がサンタのひざにのると、サンタさんが「いい子にしている
かな?クリスマスには何がほしい?」と聞きますので、子供は希望のプレゼントを
サンタの耳元で告げます。そして、サンタは袋からプレゼントを取り出し、(これ
は子供がほしいと言った物ではありません。入場料からサンタのアルバイト料を引
いたくらいの金額のものです。プラスチックのおもちゃの場合が多い。)子供に渡
しますので、子供はそれを持って、grotto から出て行きます。
で、子供がサンタに告げた希望のプレゼントはどうなるかというと、どうにもな
りません。実は隠しマイクがあって、何を子供がほしがっているか、親が聞くこと
ができる、とかそういう工夫があってもいいのではないか、とわたしは思うのです
が。
ところで、サンタクロース (Santa Clause) という名前は、アメリカから入って
きたもので、イギリスでは、今でも "Father Christmas" のほうが一般的には広く
使われています。
Christmas carol singing
クリスマスの歌を歌う習慣はたいへん古いもので、イングランドでの最古のクリ
スマス賛歌集は、1521年に出版されたものです。
"Anglo-bites" 番外編でもふれましたが、伝統的には、大人の人たちが個人の家
を回り、クリスマスの歌を歌いました。(昔はもっぱら賛美歌だったそうですが。)
家の人は、お礼に、スパイスを入れた温かいワイン (mulled wine) とミンスパイ
(mince pies) をふるまいます。(この二つの詳細については、次回の「クリスマ
スの食べ物と飲み物」をご参照下さい。)