Goodness Gracious Me(BBC2、金曜日 午後10時〜午後10時30分*)

イギリス的な、あまりにもイギリス的な、アジア人によるコメディー

アジア人による、イギリス人のための、イギリスの番組です。現在放映中のものは第1シリーズの再放送です。ラジオ4でスタートしましたが、好評につきテレビ化され、2回のシリーズがすでに放映されています。

イギリスでアジア人と言う時、ほとんどの場合においてインド亜大陸の人たち、つまり、インド人、パキスタン人、バングラデシュ人を指します。男女2人ずつのインド系イギリス人を中心にしたコント (sketch) を集めたのがこの番組。たぶんこの俳優さんたちは、第2世代か第3世代にあたるのでしょう、全く訛りのない英語を話します。

わたしの一番好きなコントは、インド系の若者のグループがある金曜日の夜遅くにイングリッシュ・レストランに行くものです。なぜイングリッシュ・レストランかと言うと、こんな時間に開いているのは「イングリッシュ」だけだから。まず最初に、注文を取りに来たイギリス人のウェーターをちょっとひやかします。注文する段になると、気の弱そうな女の子がおずおずと「なにか、もっと普通の食べ物、たとえばカレーとかにしようかしら・・・。」と言います。グループの一人はすっかりテーブルの上で酔いつぶれています。

このコントの中のイングリッシュをインディアンに変えると、まさしく週末の夜のイギリスの風景が再現できます。(カレーはフィッシュ・アンド・チップスかラザニアにでも。)つまりイギリス人はこれを見ながら自分たちの姿を笑っているわけです。他にも、有名人は(スーパーマンまで)すべてインド人だと思っているインド人のおじさんや、いつも一言、言うべきでないことをデートの相手に言ってしまっては、さびしく一人で勘定をすませてレストランを出て行くインド系の男性などの常連キャラクターもいます。

これらのコントに共通するのは、自分自身を戯画化して、それを笑うという笑いのセンスです。笑われるのは時として、アジア人であったり、またそこに逆に映ったイギリス人の姿であったりします。この自分で自分を笑うという笑いのセンスはたいへんにイギリス的なのではないでしょうか。そういう意味で、アジア人による喜劇でありながら、とてもイギリス的な番組だと言えます。新シリーズが待ち遠しいです。


*放映時間は変更になることがしばしばありますので、その日にチェックして下さい。

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