おすすめ推理ドラマ、まとめてご紹介

いろいろご紹介していますが、わたしが一番好きなのは、推理ドラマです。この手の番組は単発や短いシリーズが多いため、なかなかタイミングよく取り上げるのが難しいものです。そこで、今回はわたしのお気に入りの探偵ものを、現在放映中でないものも含めて、まとめてご紹介させていただきます。もし、テレビガイドでこれらの番組をみつけたら、ぜひ一度ご覧ください。

Jonathan Creek(BBC1)

現在、衛星放送系の再放送専門チャンネル、 UK Gold で放映中。コメディアン出身のアラン・デイビスが、天才肌で内気な主人公、ジョナサン・クリークを好演。ただし、共演の、押しの強いジャーナリストにキャロライン・クェンティンという配役には疑問もあるかも。

主人公の本業が、奇術師のトリックや舞台装置の考案ということもあって、この番組の得意技は、完全密室犯罪。誰がやったかよりも、どのようにやったかに焦点が当てられています。本格的推理ドラマ。ジョナサン・クリークと相棒のジャーナリスト、マディーとの微妙な関係がちょっと余計といえば、余計でもありますが。

余談ですが、このジョナサン・クリーク・シリーズに、実ににくたらしい日本女性が出てくる巻があります。この日本女性はわたしの友人で女優の大谷朱美さんです。

Taggart(ITV)

初回放送より17年を数える長寿番組。タイトル役、ジム・タガート警部を演じたマーク・マクマナス亡き後、若手の部下たちが伝統的なスタイルを踏襲しています。(もっとも、あのマーク・マクマナスの苦虫をつぶしたような顔が忘れられないというファンは多いかもしれませんが。)そのスタイルとは、@かなり残酷な連続殺人、A一見ストーリーとは関係ないように見えて、実は事件の鍵を握る出来事があちこちに入る、Bその逆に一見犯人のように見えて、実は犯人ではないという怪しげな人たち (いわゆる red herring というやつですね。)がぞろぞろ現れる、といったものです。こちらの番組は、誰がやったかということのほうに重点が置かれています。見るほうも、犯人探しにのめり込めます。画面造りは、とてもおしゃれ。登場人物のグラスゴー訛りの英語はかなり聞き取りにくいですが、カンのいい人なら筋を理解するのに全然心配はいりません。

Inspector Morse(ITV)

たぶん、イギリスを代表するテレビ推理ドラマと言ってもいいでしょう。これまでにも、何度も再放送されていますが、何度みても絶対に犯人が思い出せないのが不思議なところ。たしか、もうこれ以上、新しい番組は作成されないはずですが、近々、新作が原作者、コリン・デクスターから発表されるそうです。この本の中で、ついにモースは最後を迎えるとのこと。さて、これもテレビ化されるのでしょうか?

クラシック音楽とビターをこよなく愛するモース警部。その相棒は人情に厚いルイス巡査部長。ロケはだいたい夏。舞台は、オックスフォードとその近辺。というわけで、美しいイギリスの夏の風景も楽しめます。(特に、パブとそのビア・ガーデン。)

Hetty Wainthropp Investigates(BBC)

「ヘティーおばさんの事件簿」と入ったところ。(昔、NHKで、「ジェシカおばさんの事件簿」 "Murder She Wrote" というアメリカのTVシリーズをやっていましたね。今でも、イギリスでは日曜の午後に放映されていますが。)主人公は、50代にして初めて自分の探偵としての才能に気づいた主婦。これに、リストラされ、今は専業主夫を勤める夫のロバート、失業中のところを住み込み助手として拾われたニキビづらの少年ジェフリーが加わります。事件は、家出人の捜索など、小さな町の 私立探偵だけあって、平和なものが多いですが、ヘティーおばさんが、得意の聞き込み術を使って、少しずつ謎の解明に迫っていく過程が見せ場です。舞台は、イギリス北西部。事件の背景となる人間ドラマには、時にペーソスが漂います。

Touching Evil(ITV)
Cracker(ITV)

たしか、どちらも同じ脚本家によるものです。前者は、特別犯罪捜査チームの刑事、後者は、警察の犯罪捜査を助ける犯罪心理学者が主人公。主人公役は、「タッチ・オブ・イービル」は、「ソルジャー・ソルジャー」で人気を得た後、レコードまで出してしまったロブソン・グリーンが演じています。「クラッカー」は、コメディアン出身の俳優、ロビー・コルトレーンです。このページの読者のチホさんから情報によると、「クラッカー」は、日本でもBSでときどき放映されていたそうです。両番組に共通する特徴は、謎解きよりは、犯人が犯行に及ぶまでの心理過程、そして主人公が犯人を追いつめて行く際の心理的な緊張といったものに焦点が当てられていることです。したがって、犯人は最初からはっきりとわかっている場合もしばしばあります。画面造りは超ド迫力。(わたしなんて「クラッカー」を見た後、悪夢を見ちゃいました。)また、その犯人の屈折した心理と、事件が展開していく時の緊張感は、気の弱い人には耐え難いものがあるかも。「タッチ・オブ・イービル」では、邪悪な犯人たちを通して、「人間には純粋な悪という性質がもともとそなわっているものなのか?」と問いかけてきます。また、「クラッカー」は、犯人役に、ロバート・カーライルを始め、演技派の新人(抜擢当時)を起用している点でも、注目されています。

Silent Witness(BBC)

主人公は、検死医にして病理学者のサム・ライアン博士(女性)。被害者の死体に残された手がかりから、犯人を追いつめます。(本来は警察に協力する立場にありながら、警察と衝突することもしばしば。)北アイルランド出身で警察官の父親の爆死を目の前で体験するなど同情する点はありますが、それにしても嫌な性格。主人公に共感をおぼえられないと、番組にのめり込めないという方にはお勧めできません。主人公の性格とその個人的生活に目をつぶれば、本格推理ドラマとしての迫力は抜群。主人公の職替えに伴い、舞台はケンブリッジからロンドンに移っているはずです。(直近のシリーズはみていないのですよくわかりませんが。)カメラワークもかなり斬新。かなり生々しい解剖シーンがあるので、心臓の弱い方は御用心。

Prime Suspect(ITV)

こちらも、主人公は女性。男などには負けるものかという、やり手の警部です。演じるのは、ハリウッド映画でもすっかりおなじみになったイギリス人女優ヘレン・ミレン。テレビ番組というよりは、むしろ映画を意識した作りです。シリーズの最高傑作はやはり、数々の賞を受賞した第一作目でしょうか。また、少年売春夫を扱った第3作目も、社会の底辺に生きる人々とソーシャル・サービスの落とし穴(放映後、現実のよく似た事件が発覚しました。)を描くなど、社会派ドラマとしても見ごたえがあります。

Daziel and Pascoe(BBC)

図々しくて、がさつなディエル警部とその部下のハンサムでエリート刑事のパスコーという対照的な組合わせがミソ。挿話によって、当たりはずれがあるのは残念です。土曜日の9時というのがお決まりの時間帯ですが、何もすることのない土曜の晩にはいいでしょう。最近、ときどき再放送をしていますが、次のシリーズも決定しています。

Ruth Rendell Mysteries(ITV)

ウェックスフォード警部ものはお薦め。正統派推理ドラマです。が、他のものはいけません。主人公の性格が悪く、番組作りも、雰囲気や映像の美しさにとらわれていて、肝心の筋が弱い。もっとも、推理ドラマとして見ないで、ミステリーとしてみれば許せるのかもしれませんが。

Touch of Frost(ITV)

これも高視聴率を誇る刑事ものなので、書き漏らすことはできません。コメディー俳優として不動の名声を確立したデイビッド・ジェイソンが主人公、フロスト警部を演じます。わたしは最近の作はほとんど見ていないのですが、初期の作は推理ドラマとしてもよくできていたように思います。番組の味は、犯人にも情けをかけるフロスト警部の人間性。そのわりには、簡単に恋人との重要な待ち合わせを忘れるような男というのは、いったいどういう神経回路をしているのでしょう?

Midsommer Murders(ITV)

変わり者ばかりの住むミッドサマー村に起る殺人事件に、ジョン・ネトル演じる、ミスター・ナイスガイ、バーナビー刑事が挑みます。相棒は、おおぼけのトロイ巡査部長。(最新シリーズではかなりまともになってきましたが。)美しい、典型的なイングランドの田舎の風景が楽しめます。こんな村にも、本当に殺人事件がおこるのでしょうかねえ。正統派推理ドラマ。


*放映時間は変更になることがしばしばありますので、その日にチェックして下さい。

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